◆悲しい別れにより、統合失調症の症状が
時間軸が前後するが、早稲田大学入学後、六花星さんにとって大きな出会いを経験した。「アルバイト先に、当時高校生だった女の子がいました。彼女は専門学生を経て女優として活動をするようになりました。大学時代は、ずっとその女性と交際していました」
だが別れは突然に来る。「芸能関係での悩みが原因で」彼女は自死を決行。六花星さんを残して、亡くなってしまった。
「大学時代、あらゆる教職課程や司書資格、学芸員資格などを取得しようと頑張っていたことにくわえて、彼女の自死という現実が私にのしかかりました。非常に苦しく、統合失調症の症状が出てしまったんです」
それでも、六花星さんは精神科への通院を拒否した。
「抵抗感が強くて、精神科に行かずに治そうとしました。具体的には、海外から薬品を個人輸入してそれを服用することにしたんです」
◆東大を中退し、実家を追われる
卓越した頭脳を持つ六花星さんだが、医学の知識があるわけではない。幻聴や幻覚など、症状はどんどん悪化していった。「心配してくれた女友達が『絶対におかしいから』と言うので、しぶしぶ精神科を受診しました。さまざまな病院を回ったあと、最終的に都立松沢病院に入院することになりました。入院の際の対応が親切で適切な治療がうけられたこともあり、回復をしました」
だが退院して通院に切り替えると悪化して、また入院して……を繰り返すことになる。くわえて、難病を含む数々の身体障害を患い、身体障害者手帳の等級も1級とされた。精神障害はもちろん、「身体障害との重複障害が何よりつらい」と六花星さんは話す。
最初の精神科病院入院の際は東京大学に在籍中だったが、授業についていけなくなり、中途退学を選択。その決断は母親を幻滅させ、実家暮らしだった六花星さんは家を追われることになった。
「20代なかばの頃、アルコール依存症だった父が肝臓がんで亡くなりました。そこから母子家庭ですが、母から家を出るように言われてしまいました。現在は精神疾患についての理解がある母ですが、当時はまだありませんでした。また、母自身、私以上のIQがあり、一流国立大学に合格する学力がありながら、家庭が貧しくそれすら通わせてもらえなかったことから、私の指導を熱心にした経緯があります。東大中退は大いに失望させてしまったのでしょう」

