◆護身グッズの携行で沸点が変わった?
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「単純に“護身グッズ”を集めるのが趣味で。催涙スプレー、スタンガン、警棒……一応全部合法です。ただ、正当な理由がないと職質で押収されることもありますがね」
淡々と話す木村さんだが、言葉の端々には、社会に対して積み重なった不満が滲む。
「たとえば最近、満員電車とかストレス多くないですか? 不快な思いをしても“俺にはこれがある”って思うと落ち着く。実際に人に向けて使ったことはまだないですよ」
まだ――。木村さん自身も、心のどこかで“危うさ”を自覚しているようだ。
「最近スプレーの事件増えてるじゃないですか。だから、さすがに変な気は起こしませんよ(笑)。ただ……持ってると、自分の中のラインがちょっとずつ変わるというか。昔だったら“まあいいか”で済ませてたことでも、今は体が反応するんですよ。“やろうと思えばできる”って」
小さなスプレー缶が、安心にもなり、武器にもなり、そして潜在的な脅威にもなる。
◆知識なしに買うと過剰防衛のリスクも
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「SNSでも暴行される動画の投稿が増えて、さらにトクリュウによる強盗致傷や、無差別型の凶悪事件が目につくことが増えた。『誰でも被害者になりうる』という意識が社会全体に広がりつつある。そんな中で、1秒未満の噴射でも相手を制圧するのに十分な効果がある手軽さが購入を後押ししていると感じています」
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「Amazon等では身分証の提示も使用説明も不要で手軽に購入が可能です。しかし、人体に害のないOCガス(カプサイシン由来のもの)ではなく、CS/CNガス(催涙/神経ガス)を含む海外製品や非正規品が流通しているケースもある。これらは相手に重篤な後遺症を残す恐れがあり、知らずに使用すれば護身どころの話ではなくなります」
悪用が目立ちがちだが、本質は護身であるからこそ正しく使うべきだと奥本氏は強調する。
「スプレーの用途は『闘うため』ではなく『逃げるための時間稼ぎ』です。見せるだけで抑止効果が得られるケースも少なくありません。確かに悪用事例も増えていますが、かといって過度な規制を加えると、被害者側を無防備にすることになります。問題の本質は道具ではなく、使用する人間にあるのです」
催涙スプレーは「最後の保険」であることを忘れてはならない。
世間を騒がすスプレー事件簿
•5月 ……千葉イオンモールで、喫煙を巡るトラブルで加害者がスプレーを噴射
•8月 ……渋谷ヒカリエで、口論をきっかけに40代の男が催涙スプレーを撒き、0歳~60代の男女18人が目や鼻の痛みを訴え、うち8人が病院に搬送された
•10月……JR山手線内で30代の女がスプレーを散布
【護身具専門店オーナー・奥本一法氏】
防犯・護身グッズ販売の専門ショップ「ボディーガード」を秋葉原にて展開。店舗では、護身具のほか、防災グッズも豊富に揃う
取材・文/ツマミ具依
―[[催涙スプレー]人気の裏事情]―

