診断方法と受診について
いつ受診すべきか
以下のような症状が見られる場合は、セルフケアで様子を見ずに、早めに皮膚科を受診しましょう。
- 保湿などのセルフケアを2週間以上続けても、かゆみが一向に改善しない。
- かゆみが我慢できず、夜も眠れない、仕事に集中できないなど、日常生活に支障が出ている。
- 掻き壊してしまい、じゅくじゅくしたり、血がにじんだり、痛みを伴う。
- かゆみに加えて、明らかな発疹、水ぶくれ、じんましんなどが見られる。
- 全身にだるさや発熱、体重減少、黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)など、皮膚以外の症状も伴う。
診断の流れ
1. 問診で確認すること
医師は、診断の手がかりを得るために、以下のような質問をします。これらの情報が的確な診断への近道となります。
- いつから、どのあたりがかゆいですか?
- どんな時にかゆみが強くなりますか?(例:夜、入浴後、特定の服を着た時など)
- 皮膚以外に何か気になる症状はありますか?
- 現在治療中の病気や、定期的に飲んでいる薬、サプリメントはありますか?
- 普段どのようなスキンケア(石鹸の種類、保湿の頻度など)をしていますか?
2. 身体検査
医師が背中の皮膚の状態を直接目で見て確認(視診)します。発疹の有無や種類、分布、乾燥の程度、掻き壊した跡(掻破痕)などを詳しく観察します。必要に応じて、ダーモスコピーという特殊な拡大鏡を使って、湿疹の状態を詳しく調べることもあります。
3. 代表的な検査例
問診や視診で原因の特定が難しい場合や、他の病気が疑われる場合には、以下のような検査を行うことがあります。
- 血液検査:皮膚に湿疹などがある場合にはアレルギーの指標となるIgE抗体の値や、特定の物質に対するアレルギー反応を調べることがあります。皮膚に明らかな異常が無い場合には、肝機能、腎機能、甲状腺ホルモン、血糖値、貧血の有無などを確認し、内臓疾患の可能性を探ります。
- 画像検査など:血液検査などで特に異常が見つからず,原因が不明で,頑固な瘙痒が長期間続く場合などは、内臓悪性腫瘍の合併などを疑って便潜血,腫瘍マーカーの測定,胸部X線,造影CTなどを行う可能性もあります。
受診時の準備
- 症状のメモ:いつから、どんな時に、どのくらいかゆいか、試したセルフケアなどを時系列で記録しておくと、医師に正確に状況を伝えられます。
- お薬手帳:現在使用しているすべての薬(塗り薬、飲み薬、市販薬、サプリメント)がわかるものを持参しましょう。
- 服装:背中をスムーズに見せられるよう、着脱しやすい、ゆったりとした服装で行くと診察がスムーズです。
受診すべき診療科
まずは皮膚科を受診するのが第一選択です。皮膚の専門家が、的確な診断と治療を行ってくれます。もし、かかりつけの内科医がいる場合は、まずそちらで相談し、紹介状を書いてもらうのも良いでしょう。適切な診療科がわからない場合は、お住まいの自治体の保健所や相談窓口で情報を得ることもできます。
背中のかゆみの治療法
治療方針の決定
治療は、原因や症状の程度、そして患者一人一人のライフスタイルに合わせて総合的に決定されます。医師は、問診や検査の結果をもとに、どのような治療が最も適しているかを丁寧に説明し、患者の希望も聞きながら、相談の上で治療のゴールを設定し、具体的な方針を立てていきます。
薬物療法
- 保湿剤:治療の基本であり、最も重要な薬です。皮膚の乾燥を防ぎ、バリア機能を高めます。「ヘパリン類似物質」は保湿・血行促進作用、「尿素」は硬くなった角質を柔らかくする作用、「セラミド」は角質細胞間のすき間を埋めて水分蒸発を防ぐ作用があります。症状や肌質に合わせて処方されます。
- ステロイド外用薬:アトピー性皮膚炎などの湿疹による痒みの場合や、掻き崩しなどにより二次的に湿疹が出来た場合の中心的な治療薬です。炎症を強力に抑え、症状を速やかに改善します。ステロイドには強さのランクがあり、症状の重症度や部位によって使い分けます。副作用(皮膚が薄くなる、血管が浮き出るなど)を心配される方もいますが、医師の指示通りに適切な強さのものを適切な期間・量で使用すれば、非常に安全で効果的な薬です。抗ヒスタミン外用薬:ヒスタミンを抑える効果のある外用薬です。尋麻疹なども含めてヒスタミンが関係する痒みを改善させます。長く使っても副作用の心配がほとんどありません。
- 抗ヒスタミン内服薬:かゆみを引き起こすヒスタミンの働きを抑える飲み薬です。かゆみが強く、夜眠れない場合などに処方されます。最近では、眠気の出にくい第二世代の薬が主流になっています。
- その他の専門的な飲み薬:既存の治療で効果不十分な難治性のかゆみに対しては、脳内でかゆみを感じる経路に作用する「オピオイド作動薬(ナルフラフィン塩酸塩)」などが使われることもあります。
- 注意:ご自身の判断で薬の使用を中止したり、量を加減したり、他人の薬を使用したりすることは絶対にやめてください。必ず医師の診断と指示に従いましょう。
非薬物療法
- 光線療法(紫外線療法):特定の波長の紫外線を患部に照射することで、皮膚の過剰な免疫反応を抑え、かゆみを和らげる治療法です。飲み薬や塗り薬で効果が得られにくい難治性のかゆみに対して行われることがあります。週に1〜2回程度の通院が必要です。
生活習慣による管理
- スキンケア:入浴後はタオルで優しく押さえるように水分を拭き取り、肌が乾ききる前の5分以内に保湿剤をたっぷりと塗りましょう。ゴシゴシこすらず、優しく肌になじませるように塗るのがコツです。
- 食事:皮膚の健康を保つためには、バランスの取れた食事が不可欠です。特に、肌のターンオーバーを助ける亜鉛(牡蠣、レバー、牛肉など)やビタミンB群(豚肉、うなぎ、納豆など)、抗酸化作用のあるビタミンA、C、Eを意識して摂りましょう。アルコールや香辛料などの刺激物は、血行を促進してかゆみを悪化させることがあるため控えめに。
- 睡眠:質の良い睡眠を十分にとり、心身を休ませることが、肌の再生とストレス軽減につながります。
治療期間と予後
原因や重症度によりますが、適切な治療とセルフケアを組み合わせることで、多くの場合、数週間から数か月で症状は大きく改善します。
ただし、加齢による乾燥肌は体質的なものであるため、症状が落ち着いた後も、保湿ケアを毎日の習慣として継続することが、かゆみのない快適な状態を維持し、再発を予防するために非常に重要です。

