
今年で創設30周年を迎えたブランド「ミナ ペルホネン」。
「つぐ minä perhonen」では、ものづくりのあり方を「つぐ」という言葉が内包する、多様な意味を通じて紹介。100年先へと歩みを進める仕事と思想に触れられる展覧会です。
時を超えて受け継がれる“循環”のデザイン
幾種もの植物を象ったモチーフの連なりに、蝶々や鳥の姿が紛れこみ、ひそやかな生態系を示すかのような《forest parade》。
ひとつひとつ、刺繍によってあらわされたパーツが繊細に重なり合う、ひとめ見れば心が躍るようなデザインは、ミナ ペルホネンが創設から10 年を経た2005年に発表された。
それから20年後となる現在に至るまでも、新たな衣服やプロダクトに繰り返し用いられ、その都度新鮮な存在感を放っている。
既存の布地から衣服をつくるのではなく、テキスタイルからものづくりを始めるブランドにとって、デザインとはワンシーズンで消費するものではなく、循環を生み出していく営みの起点なのだ。
その創造の一部始終を間近で見届けることは難しくても、少しだけ近づいてみることができたなら――
本展では、ミナ ペルホネンのテキスタイルが、着想からかたちを得るまでの過程を、デザイナーの試行錯誤の痕跡としての原画や試作、確かな技術でそれを実現する職人や工場の様子を紹介する映像等を通して、垣間見ることができる。
また、この先100年の時代を超えていくことをひとつの指標とするブランドとしての、長年着用された洋服を生まれ変わらせるプロジェクトなどの試みも、彼らの一貫した姿勢と思いを届けてくれるだろう。
37ピースもの刺繍が織りなすparade(パレード)は、レース工場で平面の布地に刺繍を行ったあと、支持体となる布を溶解することによって、その姿を表す。
そんな物語の一端に触れれば、それを身に着ける愉しみは、さらに広がり深まるはずだ。
教えてくれたのは・・・
世田谷美術館
学芸員
加藤 絢さん
国立新美術館研究補佐員を経て2011年より現職。担当した主な展覧会に『アイノとアルヴァ 二人のアアルト』(2021年)、『絵本作家・わかやまけんの世界』(2022年)、『民藝 MINGEI―美は暮らしのなかにある』(2024年)など。
トップ掲載作品:“forest parade” 2005→s/s Photo by Mie Morimoto
『つぐ minä perhonen』
場所:世田谷美術館(東京都)
開催:開催中~2026 年2 月1日(日)
開館 :10:00~18:00(入場は17:30まで)
閉館 :月曜日、12月29日~1月3日(ただし1月12日は開館。1月13日は休館)
050-5541-8600(ハローダイヤル)
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『令和6年能登半島地震・
令和6 年奥能登豪雨 復興支援特別展
ひと、能登、アート。』
能登半島地震および奥能登豪雨の被災者を励ますため、東京国立博物館をはじめとする東京都内の文化施設などが連携。所蔵する文化財から復興への想いを託した作品を選び、石川県立美術館、金沢21世紀美術館、国立工芸館の3会場で展示。
さらに能登生まれの巨匠・長谷川等伯の国宝《松林図屛風》を題材にした映像コンテンツなどを通じて、再生への願いを紡ぎます。
開催中~12月21日(日)
石川県立美術館(石川県)
※ 他2会場は会期が異なります
https://www.ishibi.pref.ishikawa.jp/
『CREVIA マチュピチュ展』
世界各国で累計来場者数54万人を突破した展覧会が日本に上陸。王族の墓から出土した黄金の装飾品や神殿儀式で用いられた祭具など、初めて国外に貸し出される貴重な展示品を通じて、古代アンデス文明の芸術や叡智を体感できます。
さらに世界遺産マチュピチュを最新技術で再現した没入型空間が、かつてない知的冒険へと誘ってくれるはず。
森アーツセンターギャラリー(東京都)
開催中~2026年3月1日(日)
文/工藤花衣
大人のおしゃれ手帖2025年12月号より抜粋
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