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脱税額約6億円で“過去最多”水準…「金地金」密輸急増の背景にある、日本の「消費税」が抱える課題【国際税理士が解説】

脱税額約6億円で“過去最多”水準…「金地金」密輸急増の背景にある、日本の「消費税」が抱える課題【国際税理士が解説】

地政学リスクが高まるなか、安全資産といわれる「金」の密輸が急増しています。その背景には、日本の「消費税制度」が関係していると、税理士である奥村眞吾氏は指摘します。2017年には日本政府も罰則強化を行うなど対策をとっているものの、密輸は依然として後を絶たないのが現状です。密輸急増の現状とその背景について、本記事でくわしくみていきましょう。

日本で金の密輸が急増している

最近、日本では金地金の密輸が急増しています。その背景には、日本独自の「消費税制度」が深く関わっていると考えられます。

たとえば、金を正式ルートで100万円相当輸入する場合、輸入者は「100万円+消費税10万円=110万円」を税関で支払わなければなりません。しかし、金の価格は国際相場+消費税で決まることから、輸入後に国内で販売しても110万円にしかならず、正規輸入では利益が出ないのです。

一方、輸入時に消費税を納めずに持ち込めば、その10万円分がそのまま利益になります。海外旅行者がブランド品を免税価格で購入するのと同じ仕組みですが、商業目的となると不正のインセンティブは格段に高まります。

本来、消費税は「国内における課税資産の譲渡」や「保税地域から引き取られる課税貨物」に対して課されます。そのため、金地金が保税地域を通過しなければ、輸入時の消費税10%を完全に免れることが可能です。

この“10%の利益”が密輸を誘発し、過去には強奪事件など、暴力団関係者が関与するケースも出てきています。

脱税事件の約6割が「金密輸」

税関がまとめた令和6事務年度(2024年7月〜2025年6月)の「関税等(関税および輸入時の消費税)」に関する犯則調査によると、脱税事件の処分件数は300件に達し、前年度の157件からほぼ倍増しました。過去5年間で最多の水準です。脱税総額も約7億円(前年度約3億9,000万円)と大幅に増加しています。

処分は「検察官への告発」と「税関長による通告処分」に分かれますが、令和6事務年度は告発6件(前年同数)、通告処分294件(前年の約2倍)となっています。

特に注目すべきは、件数の約6割、脱税額の約9割が金地金密輸で占められている点です。処分件数は186件(前年102件から82%増)、脱税額は約6億1,573万円(前年から73%増)と急増しました。

主な摘発事例としては、

・シンガポールから航空貨物として金地金約15キログラムを密輸し、約1,470万円の消費税等を免れようとした事件

・台湾から国内線航空機に金地金約6キログラムを隠匿して持ち込み、約530万円の消費税等を逃れようとした事件

などがあります。密輸の手口は年々巧妙化しており、手荷物への隠匿、貨物偽装、国際郵便による小分け配送など、組織的な犯行が目立ちます。

また、海外の免税価格で金を購入し、申告せずに持ち込むという典型的なパターンも依然として多く見られます。

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