3.失業手当(失業保険)を受け取るための条件は?
失業手当は誰でも受け取れるわけではなく、次の2つの条件の両方を満たす必要があります。
条件1|転職活動に取り組んでいること
失業手当を受け取ることができるのは、仕事に就く意志と能力がある人です。具体的にはハローワークで求職の申し込みをしたうえで、求人に応募したり面接を受けたりすることが必要です。そのため、次のような人は失業手当の給付対象となりません。
仕事に就く意志と能力があると認められない人
- けがや病気の治療のため、すぐには仕事に就けない人
- 妊娠・出産・育児のため、すぐには仕事に就けない人
- 定年などで退職し、しばらく休養するつもりでいる人
- 結婚を機に退職し、しばらく家事に専念するつもりでいる人 など
条件2|一定以上の被保険者期間があること
失業手当を受け取るには、雇用保険の被保険者期間が一定以上あることが求められます。必要な被保険者期間は、退職の理由や状況によって異なります。
自己都合で離職した場合
自己都合によって離職した人が失業手当を受け取るには、離職日以前の2年間において、被保険者期間が通算12ヶ月以上あることが条件となります。
自己都合による離職の例
- キャリアアップ目的の転職
- パワハラやセクハラに該当しない職場の人間関係への不満
- 独立・起業 など
やむを得ない理由で離職した場合(特定理由離職者)
やむを得ない理由で離職した人や、契約社員などで更新を希望しても雇用主から合意が得られなかった人は「特定理由離職者」に該当します。この場合、離職日以前の1年間において、被保険者期間が通算6ヶ月以上あることが条件となります。
やむを得ない理由による離職の例
- 体力の不足や、心身の障がい、疾病などの健康問題
- 妊娠、出産、育児
- 身内の介護
- 結婚に伴う引越し
- 転勤または出向に伴う別居の回避
- 勤務先の人員整理における希望退職 など
*参考:ハローワーク|特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要
会社都合で離職した場合(特定受給資格者)
勤め先の倒産や解雇など、会社都合で離職した人は「特定受給資格者」に該当します。この場合、離職日以前の1年間において、被保険者期間が通算6ヶ月以上となります。
会社都合による離職の例
- 倒産や解雇
- 事業所の廃止・縮小
- 事業所の休業が3ヶ月以上続いた
- 事業所の移転で通勤が難しくなった
- いやがらせやハラスメントを受けた
- 妊娠や出産を理由に不当な扱いを受けた
- 契約更新の確約があったが更新されなかった
- 当初提示された労働条件と実際の労働条件が大きく異なった
- 賃金がもともと支払われていた金額の85%未満に減った
- 離職前6ヶ月以内に長時間におよぶ時間外労働があった(3ヶ月連続45時間以上など)
- 賃金の3分の1を超える金額が期日までに振り込まれなかった など
*参考:ハローワーク|特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要
被保険期間の確認方法
保険者期間は、離職日を1日目としてさかのぼって計算します。

離職日が12月13日の場合、11月14日までを1ヶ月、10月14日までを2ヶ月として扱います。ただし、月の労働日数が11日未満かつ80時間未満の場合、その月は被保険者期間の対象外となります。
4.失業手当(失業保険)はいくらもらえる?
一般的に失業手当は、直近6ヶ月間に支払われた月収の50〜80%が支給されます。具体的には、過去6ヶ月の給料を180日で割った賃金日額と、離職時の年齢や雇用保険の被保険者期間に応じて、支給総額が決まります。詳しい計算方法について確認してみましょう。
STEP1|賃金日額を計算する
まず、次の計算式で賃金日額を求めます。
賃金日額 = 離職前6ヶ月間に支払われた給与*の合計額 ÷ 180日
*給与には通勤手当や役職手当などの各種手当は含まれるが、賞与(ボーナス)は含まれない
ただし、賃金日額には上限と下限があります。
賃金日額の上限と下限
離職時の年齢 | 上限額 | 下限額 |
|---|---|---|
29歳以下 | 1万4,510円 | 3,014円 |
30〜44歳 | 1万6,110円 | |
45〜59歳 | 1万7,740円 | |
60〜64歳 | 1万6,940円 |
STEP2|基本手当日額を計算する
次に、STEP1で求めた賃金日額に所定の給付率を掛けて基本手当日額を求めます。
基本手当日額 = 賃金日額 × 50〜80%
基本手当日額の給付率
離職時の年齢 | 賃金日額 | 給付率 |
|---|---|---|
60歳未満・65歳以上 | 5,339円以下 | 80% |
5,340~1万3,140円 | 80%~50% | |
13,141円以上 | 50% | |
60 〜 64歳 | 5,339円以下 | 80% |
5,340~1万1,800円 | 80%~45% | |
1万1,801円以上 | 45% |
なお、基本手当日額にも上限と下限がありますのでご注意ください。
基本手当日額の上限と下限
離職時の年齢 | 上限額 | 下限額 |
|---|---|---|
30歳未満・65歳以上 | 7,255円 | 2,411円 |
30 〜 44歳 | 8,055円 | |
45 〜 59歳 | 8,870円 | |
60 〜 64歳 | 7,623円 |
STEP3|給付期間を確認する
給付日数は仕事を辞めた理由が自己都合か会社都合かによって異なります。なお、やむを得ない理由で離職した場合(特定理由離職者)も、自己都合で離職した場合と同じ期間の給付日数となります。
自己都合・やむを得ない理由で離職した場合の給付日数
雇用保険の被保険者だった期間 | ||
|---|---|---|
10年未満 | 10年以上 | 20年以上 |
90日 | 120日 | 150日 |
自己都合で仕事を辞めた場合、給付日数は90〜150日となります。給付日数が最長の150日となるのは雇用保険の加入期間が20年以上ある人なので、多くの場合、給付日数は90日、長くて120日となります。
会社都合で離職した場合(特定受給資格者)の給付日数
離職時 | 雇用保険の被保険者だった期間 | ||||
|---|---|---|---|---|---|
1年未満 | 1年以上 | 5年以上 | 10年以上 | 20年以上 | |
〜 30歳 | 90日 | 90日 | 120日 | 180日 | ─ |
30 〜 34歳 | 90日 | 120日 | 180日 | 210日 | 240日 |
35 〜 44歳 | 90日 | 150日 | 180日 | 240日 | 270日 |
45 〜 59歳 | 90日 | 180日 | 240日 | 270日 | 330日 |
60 〜 64歳 | 90日 | 150日 | 180日 | 210日 | 240日 |
会社都合で仕事を辞めた場合、給付日数は90〜330日となります。上の表を見ると、子育てなどで出費の多い30〜50代が手厚く保障されていることがわかります。一方、20代の場合、給付日数は90日、長くても120日となるケースがほとんどです。
このように失業手当を受け取れる期間は多くの場合3〜4ヶ月程度ですので、転職活動は計画的におこなう必要があります。
STEP4|支給総額を計算する
最後に、STEP2とSTEP3で求めた基本手当日額に給付日数を掛けると、失業手当の支給総額がわかります。
支給総額 = 基本手当日額 × 給付日数
支給総額の計算シミュレーション例
条件
- 年齢:25歳
- 雇用保険の被保険者期間:3年
- 退職前6ヶ月月間の賃金:190万9,800円
(1)賃金日額の計算
賃金日額は、退職前6ヶ月間の賃金合計を180日で割った金額です。
賃金日額 =190万9,800円 ÷ 180日 = 1万610円
(2)基本手当日額の計算
基本手当日額は賃金日額に給付率を掛けた金額です。賃金日額が1万610円の場合、給付率は58.61%*となるので、次のように計算します。
基本手当日額 = 1万610円 × 58.61% = 6,219円
*離職時の年齢が25歳で賃金日額が1万610円の場合
(3)基本手当総額の計算
基本手当総額は基本手当日額に給付日数を掛けた金額です。離職時の年齢が25歳、雇用保険の被保険者期間が3年間の場合、失業保険の給付日数は90日になるため以下の計算となります。
基本手当総額 = 6,219円 × 90日 = 55万9,710円

