11月17日から開かれていたこのショーは、単なる飛行機の見本市ではなく、今後数十年の世界の空の勢力図を決める、極めて重要なビジネスイベントなのだ。ここに来れば、これから私たちが乗る飛行機、そして空の移動がどう変わるのかが、はっきりと見えてくる。

◆地元エミレーツ航空の戦略。快適性を追求した未来への投資
このショーの主役の一つが、ドバイを拠点とする巨大航空会社、エミレーツ航空である。空飛ぶ宮殿と呼ばれるA380を116機運航しており、他にもボーイング777シリーズを140機持ち、日本線は羽田、成田と関空にも就航している。彼らはこのイベントを最大限に活用し、自社の「将来のビジョン」を世界に向けて発信している。◆巨大な「ワイドボディ機」への揺るぎないコミットメント


LCCが小型機で路線を増やしている時代に、なぜエミレーツはあえて巨大で豪華なワイドボディ機にこだわるのか。その背景には、同じUAEを拠点とする「フライドバイ」との戦略的な役割分担が存在する。
フライドバイは小型のナローボディ機(通路が一本の機体)を中心に使用し、ドバイから比較的近距離の路線や、利用客がそれほど多くない地域への路線網を張り巡らせている。一方、エミレーツ航空は、機内空間が広くて快適なワイドボディ機のみを運航するという明確な方針を貫いている。
この連携により、フライドバイが小型機で近隣諸国の小さな都市や地域からの乗客を集め、それらの乗客はドバイでエミレーツ航空の大型機に乗り継ぎ、世界中の長距離路線へ移動するという「補完的役割」が成立している。
つまり、エミレーツ航空は、フライドバイに小型機の役割を任せることで、自社は「快適な長距離フライト」に完全に特化するという、極めて洗練されたハブ戦略を追求しているのだ。新型のボーイング777Xで空飛ぶ宮殿がどのように進化するのか楽しみだ。

