[射水エリア]「昼セリ」見学 ―【新湊漁港】
午後に行われる全国でも珍しい「昼セリ」を見学。水揚げ後すぐに競りにかけられるため、場内は活気に満ちています。ベニズワイガニが並ぶ光景は壮観で、基準を満たしたものは「高志の紅ガニ(こしのあかガニ)」としてブランド化。東京から訪れる人がいるというのも納得です。

「昼セリ」は12:30頃から開催(日曜日・水曜日は定休日)。活気ある競りの様子が間近で体感できます

新湊漁港の「昼セリ」は、1人100円で見学可能。※事前予約が必要

これは9月〜翌5月のベニズワイガニ漁期だけに見られる季節限定の景色
[射水エリア]昼食・押し寿司体験―【みなとキッチン】
ランチで訪れたのは、新湊漁港のすぐそばにあるシェアキッチン【みなとキッチン】。生産者や料理人、地元の食の担い手が交わる“地域の食の交差点”で、昨年もイベント取材で訪れた場所です。

大きな木のテーブルと開放的な窓が心地よい、【みなとキッチン】のキッチンスタジオ
この日は特別に、本ズワイガニの押し寿司づくりを体験。2人で1杯の蟹をさばき、脚・胴・ツメ・味噌を丁寧に分け、生姜酢飯や大葉との層を重ねて仕上げます。

鮮度抜群の本ズワイガニ。身の張りと色艶は、港町・新湊ならではのごちそう

自分で捌いた本ズワイガニ

木枠に酢飯、大葉、海苔、カニの身を重ね、最後にそっと押して仕上げます

本ズワイガニの旨みが凝縮された押し寿司。産地ならではの贅沢な味わいでした
今回の押し寿司体験は限定プログラムですが、【みなとキッチン】では季節や水揚げに合わせた多彩なイベントを開催中。富山湾の“今”を知るなら、まずはイベントカレンダーをチェックしていみてください。
[富山エリア]地酒「富山ノ酒と寿司」シリーズの試飲 ―【バール・デ・美富味】
富山駅前に戻り、日本酒バル【バール・デ・美富味】へ。季節の生酒や日本酒カクテル、地元食材を使った料理が揃い、カジュアルに日本酒を楽しむ体験ができる場所です。

富山駅から徒歩1分とアクセス抜群の【バール・デ・美富味】

県内14蔵が共同開発した新商品「富山ノ酒と寿司」

この日は、林酒造場「黒部峡」と桝田酒造店「満寿泉」をいただきました
店内で目を引いたのは、寿司ネタに合う日本酒「富山ノ酒と寿司」。ラベルに寿司ネタが描かれ、相性が一目でわかるユニークな一本です。この日は特別に、同シリーズの試飲とます寿司のペアリングを体験。さらに「富山県酒造組合」専務理事の東さん、「富山ます寿し協同組合」理事長の大郷さんから日本酒やます寿司の背景を伺い、富山の食文化の奥深さを改めて実感しました。
[富山エリア]見学―【富山市ガラス美術館】【池田屋安兵衛商店】
夕食までの間に、【富山市ガラス美術館】と【池田屋安兵衛商店】へ。
【富山市ガラス美術館】は、グラスアートを専門に展示する美術館。チフーリ(Dale Chihuly)の常設展示と、隈研吾建築の美しい空間が楽しめる、富山を代表するアートスポットです。この日は【富山市ガラス美術館】開館10周年を記念し、日本の現代ガラス芸術の歴史と現在を紹介する展覧会が開催されていました。

隈研吾氏が手がけた設計。富山県産材のルーバーが柔らかな光をつくる開放的な空間

企画展「開館10周年記念:めぐりあう今を映す―日本の現代ガラス 1975-2025」は、2026年1月25日まで開催
続いて訪れたのは【池田屋安兵衛商店】。富山が“くすりの町”として発展した歴史を今に伝える老舗の和漢薬店です。店内にはレトロな薬棚が並び、名物「越中反魂丹」など伝統薬が揃います。古い製造機を使った“丸薬づくり体験”も人気で、旅の思い出にぴったり。2階には薬膳料理のレストランも併設され、医薬と食の文化を一度に味わえるスポットです。

白壁土蔵造りの趣ある外観

昭和レトロなパッケージが並ぶ店内
[富山エリア]夕食・寿司コース ―【鮨 順風満帆】
締めくくりの夕食は、今年8月にリニューアルした寿司店【鮨 順風満帆】へ。富山湾の朝獲れ鮮魚を中心に、全国から届く旬の魚介と富山の地酒を楽しめる一軒です。富山の地酒を多く取り揃えており、「黒部峡」「満寿泉」に加え、希少な「勝駒」やANA国際線ビジネスクラスにも採用されている「羽根屋」も揃う充実ぶり。旅の締めにふさわしい時間が始まりました。

富山駅から徒歩5分。旅の締めに立ち寄りやすく、最後の一食にぴったりの一軒

「香箱ガニ」。内子・外子・身が重なる奥深い旨みに、思わずため息がこぼれる一品

「刺身3種盛り」。氷見産のブリ、滑川産の甘エビ、岩瀬産のきじはた。産地が鮮度を物語る一皿

「げんげの天ぷら」。サクッと軽い衣に、とろりとした身が際立つ深海魚の一品

「炙り黒ムツ」「炙り赤ムツ」。脂がふわりと溶け、炙り香が旨みを引き立てる至福のひと口

「白エビ」。とろりと甘く、口の中でほどける富山ならではの味わい

「アジ」「バイ貝」。アジは香り高く軽やか、バイ貝は瑞々しい食感と旨みが際立つ一貫
コース全体を通し、富山の豊かな海の幸を余すことなく堪能できました。前菜の白エビやバイ貝、ホタルイカに始まり、刺身は氷見や滑川の魚が主役。香箱ガニや紅ズワイの茶わん蒸し、げんげの天ぷらなど温菜も印象的で、握りは平目、アオリイカ、炙りムツ、氷見のブリが続きます。どれも鮮度と丁寧な仕事が際立ち、富山の地酒と合わせれば、旅の締めに相応しい満足感に包まれましたーー。
一日を通して出合った富山の海の幸と、その背景にある人・文化・歴史。どの体験も、「寿司といえば、富山」と胸を張って言える理由を教えてくれるものでした。富山湾が育む多彩な魚介、食材に寄り添う地酒、職人の確かな仕事。そのすべてが一貫に凝縮され、旅の最後にいただいた寿司は、この土地の豊かさそのもの。
今回の旅で深めた“富山の寿司”への理解を胸に、また季節を変えて、この地ならではの旬の一貫に出合いに来たいと思います。
