
最高の資産防衛術は「節税」であると語るのは、『最強の投資と節税 二刀流税理士のお金の増やし方』(ワン・パブリッシング)の著者である永江将典氏。相続税対策もその一つです。しかし、相続そのものでいうと、遺された財産をめぐり、身内同士が揉め合う「相続トラブル」は他人ごとではありません。そこで、永江将典氏の著書『最強の投資と節税 二刀流税理士のお金の増やし方』(ワン・パブリッシング)より一部抜粋し、”争族”回避のために事前に知っておくべきことを解説します。
相続トラブルにならないために
ここでは相続の際にトラブルにならないよう、知っておいてほしいことを3つお伝えします。
(1)子どもたちが揉めないようにする
相続というと税額ばかりに気をとられがちですが、子どもたちが財産分けで揉めない対策も必要です。もちろん家族の絆にヒビが入るのも悲しいことですが、加えて困るのが、揉めているうちに納税期限が来てしまうこと。
たとえトラブルで財産が分けられない状態でも、相続税の申告と納税期限は刻々と近づいてきます。原則は亡くなってから10ヵ月以内ですので、揉めているうちに申告期限が迫り、焦って土地などを安値で叩き売らざるを得ないことも。
当然その分、家族の資産が減ってしまいますから、揉めないように対策しておくことが大切なのです。なお揉める原因で多いのは、財産が自宅・土地だけのケース。お金と違ってシンプルに分けにくいからです。
また長女だけが親の介護をしていたような場合も、トラブルになりやすいでしょう。経験上、こういった状況下で相続財産を同額で分けようとすると、必ずと言っていいほど揉めることになります。
小説やドラマの話ではなく、こういったことが現実に起こっていることを、知っておいてくださいね。
(2)相続税のシミュレーションを行っておく
そうしたトラブルを避ける意味でも、事前にシミュレーションを行っておきましょう。ネットで「相続税 シミュレーション」などと検索し、おおよその概算でもいいので計算してみましょう。
誰かに相談するとしても、あらかじめ「現時点でいくら税金がかかるのか」を知っておくことが重要です。相続税額の概算が分かれば、より的確な対策を行っていくことができるようになります。
なお、相続税には税金がかからない基礎控除額があります。相続額がその範囲内であれば対策は必要ありませんので、その点も確認してみてください。
(3)あえて贈与税を支払うほうがよいケース
相続税対策としておすすめできるのは、「生前贈与」。早く始めれば始めるほど相続税の支払い額が減ります。
しかし、全ての財産を譲り渡すことはできないケースも多いでしょう。そうした際は相続税よりも税率が低いなら、あえて贈与税を納めながら生前贈与を行うほうがよい場合もあります。
たとえば相続税率が20%以上になる人であれば、毎年ひとり当たり310万円まで贈与税を支払いつつ財産を渡すほうが、結果として税金が安くなります。その理由は、110万円を超えた200万円までは、贈与税率が10%と相続税率よりも低いためです。
仮にもし、子ども3人+孫5人の計8人に10年間310万円を贈与すると、「310万円×8人×10年」で2億4800万円の相続財産を減らすことができます。これは大きい金額ですね。
こうした相続トラブル対策を行いつつ、節税ノウハウを実行に移してほしいと思います。それだけで、あなたの手元に残る資産は大きく増えることでしょう。
永江将典
公認会計士・税理士
