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傷病手当金は「申請したら終わり」ではない…退職・休職して〈治療生活〉をはじめる際の注意点【看護師FPが給付金活用のポイントを解説】

傷病手当金は「申請したら終わり」ではない…退職・休職して〈治療生活〉をはじめる際の注意点【看護師FPが給付金活用のポイントを解説】

傷病手当金は、退職時や休職中の生活費を補う大切な制度です。しかし、休職中の経済的不安を軽減するためには、傷病手当金申請後も油断はできません。給付金は「申請したら終わり」ではないのです。看護師FPの黒田ちはる氏の著書『【図解】医療費・仕事・公的支援の悩みが解決する がんとお金の話』(彩図社)より、傷病手当金申請後の注意点をみていきましょう。

傷病手当金の注意点

傷病手当金は申請後も注意が必要です。家族や専門家と相談しながら家計を管理していきましょう。

「申請したら終わり」ではない

傷病手当金は、申請したら終わりではありません。

今までの給料と比べて減る方も多いので、安心して休めるよう、これからご説明する2つの注意点についても考えておくと良いでしょう。

ただ、これから治療を始める患者さん自身にとっては、ここまで考えるのは大変なことです。このあたりを心配されてご相談に来られるのは、ほぼ患者さんのご家族です。ご家族と一緒にお金のことを共有しながら考えていけると良いですね。

一人暮らしの方は、すべてを一人で抱え込まずに、専門家(FP)を活用していくことも安心して休職できる早道なのではないでしょうか。

注意点①口座入金まで時間がかかる

がん患者さんの場合、手術や抗がん剤治療が始まる前から痛みや倦怠感、貧血などの症状があり、体調が優れない方もいます。

しかし、多くの方は治療開始前までは仕事ができる状態であるため、実際には治療が始まってからの体調の変化により休職し、傷病手当金を申請するケースが一般的です。

乳がん治療で仕事を休んだAさんは、右上の図のような流れで傷病手当金の受給までに時間がかかりました。

[図表]出典:『【図解】医療費・仕事・公的支援の悩みが解決する がんとお金の話』(彩図社) [図表]傷病手当金の申請の流れ(Aさんの場合)[図表]出典:『【図解】医療費・仕事・公的支援の悩みが解決するがんとお金の話』(彩図社)

治療を開始し、11月18日から仕事を休み始めた時点から傷病手当金の申請をする場合、主治医に「治療の影響で働くことが難しかった」という証明を作成してもらい、職場でもこの期間の欠勤を証明する書類を作成してもらった後、健康保険組合に申請したのは治療開始から約1ヵ月後(12/21)でした。その後、3週間の審査を経て、実際に傷病手当金が口座に振り込まれたのは治療開始から約2ヵ月後(1/16)でした。

申請後には審査が行われますが、その期間は健康保険組合によって異なります。早いところでは2週間前後で審査が完了する場合もありますが、再発や転移のケースでは前回の情報との関連性を確認するため、審査に時間を要することもあります。

また、書類に不備があったり、不透明な部分について問い合わせが発生したりすると、その対応に時間がかかることもあります。

そのため、申請の流れや必要書類を早めに確認し、スムーズに手続きを進めることが大切です。また、治療開始後の生活費の見通しを立てておくことで、経済的な不安を軽減できるでしょう。

傷病手当金の注意点はまだほかにも

注意点②社会保険料・住民税は自分で支払う必要がある   

給料の支払いタイミングによっては、傷病手当金が振り込まれるまでの間、無収入となってしまう方もいます。

しかし、たとえ無収入になったとしても、もともと給料から天引きされていた社会保険料(健康保険料・介護保険料・厚生年金保険料)や住民税(前年度の所得に基づく)は変わらず支払う必要があります。

また、医療費についても、高額療養費制度の「多数回該当」(4回目以降の自己負担軽減)が適用されるまでは自己負担限度額までとはいえ、数万円(収入区分によっては10万~20万円単位)かかります。

そのため、休職を検討する際には、傷病手当金が支給されるまでの社会保険料や住民税、医療費の負担を踏まえたお金の見通しを立てておくと安心です。

出典: 出典:『【図解】医療費・仕事・公的支援の悩みが解決するがんとお金の話』(彩図社)

注意点③ボーナス的なものはない

傷病手当金は、休職中の生活費を補う大切な制度ですが、ボーナスのような一時的で大きな収入は含まれません。そのため、毎月の支払いには対応できても、ボーナスを充てていた支出については別の方法を考える必要があります。

実際に、ボーナス支給時期が近づくと「休職中はボーナスがどうなるのか」といったご相談が増える傾向にあります。

ボーナスというのは、給料以外に夏季や年末などに支払われる一時金、賞与、特別手当のことをいいます。

給料とは違い、労働基準法などで「支払わなければならない」と定められているわけではないので、業績悪化の時にはボーナスを支給する義務はありません(参考:労働基準法第24条第2項の例外、昭22.9.13発基17号)。ボーナスの査定期間中に休職している場合、その扱いは企業ごとに異なります。

例えば、ボーナスが6月末~7月に支給される場合、一般的には前年11月~4月が算定期間となることが多く、その期間に在籍していれば支給されるケースもあります。

ただし、休職期間や勤務実績によって減額されることがほとんどです。

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