いつまでも輝く女性に ranune
ジュリエット・ビノシュのとどまらない挑戦。初監督作を東京国際映画祭で披露

ジュリエット・ビノシュのとどまらない挑戦。初監督作を東京国際映画祭で披露

ジュリエット・ビノシュ
photos: Wataru Yoneda
stylist: Jonathan Huguet
hair: Asahi Sano
make-up: Yuka Hirac
ジャケット¥693,000 シャツ¥225,500 パンツ¥209,000 ベルト、シューズ[ともに参考商品](すべてグッチ/グッチ クライアントサービス)
ブローチ“フレシュ”[WG×ダイヤモンド]¥3,234,000 イヤリング“キャトル”[WG×ダイヤモンド]¥16,104,000〈右手〉リング“フレシュ”[WG×ダイヤモンド]¥4,752,000[すべて予定価格](すべてブシュロン/ブシュロン クライアントサービス)

──英国のダンサー兼振付師アクラム・カーン氏と世界各国で公演を行ったダンス・パフォーマンスの制作過程を記録したドキュメンタリー映画『In-I in Motion(イン・アイ・イン・モーション)』で監督デビューを果たしましたが、振り返ってみていかがでしたか。

まず、ダンスで作品を作り上げることが身体的にも精神的にも非常に難しい挑戦だった。その後、ロバート・レッドフォードから映画にするように勧められたものの、制作会社を持っているわけでもなく、時間もない。どうしたら映画になるのかまったく想像もつかなかった。そんななか、2年半前にノルウェーのプロデューサーから「何か実現したいプロジェクトはありますか?」と聞かれた瞬間に「これをやるしかない!」とひらめいたの。

──新たな挑戦をするときに、意識している心構えがあれば教えてください。

「どうぞ私をお救いください」と神に祈るような気持ちになることもあるけれど、最終的には自分の直感を信じること。「自分にとって大事なものは何か」「自分とは何者なのか」といった問いかけを続けていると、“芯”となるものが見えてくるように思う。

ジュリエット・ビノシュ

──これまでさまざまな役どころを演じられていますが、映画に求められている女性像は変わってきたと感じますか?

そうなっていると期待したい。私自身はキャリアの早い段階から自分の意志を貫き、役に自分の要素を入れられるようにキャラクターを模索してきた。優れた監督というのは俳優を信用してくれる人が多いけれど、映画作りにおいては、知識と洞察力のある監督とそれを表現する俳優との共同制作が楽しいの。

──文化や芸術の分野で活躍している女性を称えるため「ケリング」がカンヌ国際映画祭と提携して創設した「Women In Motion(ウーマン・イン・モーション)」のトークに過去、参加されていましたが、最近の映画界でもまだ女性と男性の待遇には差がありますか?

いまでもあると思う。ただ、フランスは強い女性監督が出てきたことによって、最近の映画界は揺さぶられているところがある。それに比べると、日本は女性の監督やプロデューサーの数がまだまだ少ないのではないかと思う。男性が権力を保持しようとしている部分もあるけれど、それもアートの力で変わっていくと信じている。

ジュリエット・ビノシュ

──ご自身がキャリアをスタートさせた当時の映画界は、いまよりも男性社会だったと思います。そのなかでどのように戦ってきたのでしょうか。

1980年代に俳優として活動を始めた頃は、まさに男性中心の世界だった。人間を描くうえで欠かせないラブシーンとは別に、意味のない女性のヌードシーンがほとんどの映画にあったくらい。夢を持って映画界に入ったけれど、そんなふうに間違っていると感じることも多かった。だから、10年ほどキャリアを積んでから出演したある映画で私が裸で部屋を歩くシーンを撮影したときに、「本当に必要ですか?」と監督に直訴して変更してもらったの。20代前半の頃は経験が足りないから、分析をして行動に移すことができなかったけれど、知見が増えれば正しいことができるようになる。

──『イン・アイ・イン・モーション』でアソシエイト・プロデューサーを務めるMEGUMIさんがジュリエットさんを「最もクールな女性」と称していますが、自分らしく生きる秘訣とは?

自分が欲しているものや自身の感情を突き詰め、何よりも自分でいることを大事にしている。その過程で過ちを犯すこともあるかもしれないけれど、そのときは間違いを認めて、そこから学べばいい。頭で考えすぎると湧き上がってくる感性を殺してしまうこともあるから、静寂の中で自分に問いかけて、心の中にいる自分を信用するの。この感覚こそが本質だと思う。あとは、自分にとっての楽しみとは何かを考え、幸せな道を選ぶこと。障壁を乗り越えながら前に進み、賢く生きることが大切。

ジュリエット・ビノシュ MEGUMI
第38回東京国際映画祭のレッドカーペットにて。〈右から〉ジュリエット・ビノシュと『イン・アイ・イン・モーション』のアソシエイト・プロデューサーを務めたMEGUMI
©2025 TIFF
ジュリエット・ビノシュ 『イン・アイ・イン・モーション』
©2025 MIAO PRODUCTIONS

ジュリエット・ビノシュの監督デビュー作。英国のダンサー兼振付師アクラム・カーンとビノシュが世界各国で公演を行った2007年のダンス・パフォーマンスを、その企画段階から公演当日までの長期間にわたって記録したドキュメンタリー。パフォーマンスを作り上げる過程で激しくぶつかり合いながらも、互いの表現を高め合う二人の姿に引き込まれる。

ジュリエット・ビノシュ 『イン・アイ・イン・モーション』
©2025 MIAO PRODUCTIONS

イン・アイ・イン・モーション
(原題:In-I in Motion)
監督:ジュリエット・ビノシュ
キャスト:ジュリエット・ビノシュ、アクラム・カーン
https://mk2films.com/en/film/in-i-in-motion/
日本公開未定

第38回東京国際映画祭公式プログラム TIFFスペシャルトークセッション ケリング「ウーマン・イン・モーション」トーク

・「映画とは何か」「表現とは何か」真摯に向き合い続けるジュリエット・ビノシュ

配信元: marie claire

あなたにおすすめ