質問その2:「今回、現職(退職済みの場合は前職)を辞めたい(辞めた)理由は〇〇とのことですが、それ以外の理由を教えてください」
前述の通り、退職理由の多くは現職における不満であり、それはおかしなことではありません。ただし、念のため、考えていただきたいことがあります。
① 本当にそれが正当な退職理由か(そうだと相手が思うか?)
退職理由が「現職企業の経営者や上司のやり方が間違っている(自分の考えと合わない、違和感があるなど)」ということを、とうとうと語る幹部転職希望者は少なくありません。
そもそも、職場環境や経営の問題がある企業は多く存在します。幹部としてのそれなりの立場であるがゆえに、自社の内情が見えてしまったりということもあるでしょう。それを見て見ぬ振りはできない、コンプライアンス上のリスクもある、自分自身に火の粉が降ってくる可能性も……。
こうした事態に陥ったので転職したいという相談は、私も多く受けてきましたし、それが事実であればもちろん、現社から一刻も早く脱出すべきですねと、全力で新天地のご紹介をしています。
ただ、この「現職企業がおかしい」「自分の考えと合わない」「違和感がある」といった退職理由の場合、<間違っているのはあなたのほうかもしれない>ということを、念のため一度、冷静かつ客観的に、しっかり考えてみて欲しいのです。
現場の限られた視界からは正しく見えたり当たり前と思ったりしていることが、経営レベルの視界から見ると「それはまずい」「全体から見たらやるべきではない」というケースは決して少なくありません。自身の視座を一度客観的に見てみるとよいでしょう。
② 次に繋がる辞め方か、中途半端or自己中心的な退職理由ではないか?
状況の確認は終えました。では、あなたはそのことについて、社長や経営陣、上司にしっかり相談や提案、意見をしましたか?
仮に会社の間違った判断や行動があったとした場合、エグゼクティブという立場にありながら黙って見過ごしたのでは困ります。会社や部署のことを考えれば、改善改革の提案をできてこそ、有能な幹部・経営陣です。
実際、転職面談などでこういったことが現職で起きていると言われ、「社長や上司と相談してみましたか」と問うと、「いえ、まだ話をしていません」という回答がかなり多くの割合であります。
であれば、転職活動を始める前に(活動しながらでもよいですが)、まずは現職でしっかり対応してみたほうがよいです。
実際に、こうしたアドバイスをした転職相談者の何割かが、改めて社長や上司に相談や提案をしてみたところ、きちんと理解され、よい方向に向かい、現職に踏みとどまることになったケースもありました。
③「うちに来ても、同じことを言うんじゃないの?」
面接で現職への不満を語った場合、特に社長が面接相手のときは確実に、こう思われています。
「なんだ、この人、転職活動先のあちらこちらで、こんな現職の不満を言って回っているんだな。うちの会社だってパーフェクトじゃないし、色々強化したりテコ入れしたりしたいからこそ、幹部を採用したいと思っているのに。ということは、うちに入社しても、いずれ同じようなことを思って、俺には言わずに、外で言い回るようになるんだろうな」――と。 採用結果は言わずもがな、ですよね。
質問その3:「あなたにとってマネジメント(幹部人材)、経営(経営人材)とは、どのようなものですか?」
直接こんな風に聞かれることは多くはないかもしれません。しかし、相手側の社長や経営陣は、幹部候補にはマネジメントについての考え方・価値観について、経営クラスであれば事業観、経営観について知りたいと考えます。そして、それが自社の価値観と合致しているか否かを確認します。
ここで重要なのは、「相手企業に合わせて迎合しない」ということです。面接時に応募先企業の企業理念やコンセプトなどを読み込み、それに合わせようとする人をよく見かけます。
もちろん自分の価値観と合致していれば、それを素直に伝えて欲しいのですが(それこそがよい転職先です)、面接対応で相手に合わせて「いいですね」などと言っても、本心で響いていなければ、底が浅く相手に伝わってしまうものです。それなりの社長であれば、「逆に〇〇さんとしてのこだわりとか、ないの?」と切り返されるでしょう。
こればかりは、付け焼き刃では通用しません。あなたがこれまで取り組んできたマネジメント・事業執行・経営の経験から具体的かつ体験的に培われた持論や一家言を、ぜひとも相手企業の社長などにぶつけてください。それこそが、相手側が採用候補者としてのあなたから、一番聞きたいことです。
