金ETF流入は過去最高ペース…2026年も“拡大余地”あり
10月は、金ETFに約82億ドルの資金が流入しました※7。第3四半期の記録的な流入額260億ドル(2020年第2四半期の従来の四半期最高額240億ドルを更新)に続く流れで※8、年初来の累計流入額は現在約720億ドルに達し、2020年通年実績をすでに上回っています※9。
とはいえ、金の保有量から見ると拡大の余地があります。現在のETF積み増しサイクルは2024年5月に始まり、78週が経過した時点で保有量は3,887トンで、812トン増加しています(2020年11月のピークを42トン下回る)※10。
参考までに、過去2回の長期サイクルは2008年終盤~2012年終盤(221週間、1,823トン増加)と2016年初頭~2020年終盤(253週間、2,341トン増加)でした※11。
現在の局面は、両サイクルと比べると、期間の長さにおいてそれぞれ35%、31%、増加量においてそれぞれ45%、35%に過ぎません。もし例年どおり11月~12月の季節要因による弱含みがなければ、ETFの総保有量が過去最高を更新する可能性もあります。
[図表3]中央銀行による金の年間需要★3
中央銀行による金購入は新興国がけん引
中央銀行は第3四半期も構造的な金需要の源泉となり、価格上昇にもかかわらず購入は堅調を維持しました。これは金価格の下限水準を押し上げ、価格の下方変動リスクの抑制に寄与しています。
公的部門による金購入は、2四半期連続の需要減速を経て再加速しました。約220トンという購入量は、前四半期(172トン)比で28%増、5年間の四半期平均(207トン)を6%上回り、前年同期比(199.5トン)では10%増となりました※12。第3四半期末までの年初来購入量は634トンに達し、過去3年間の同時期を下回るものの、2022年以前の年間平均400~500トンを大幅に上回る水準となりました※13。
新興国中央銀行は引き続き需要全体に大きく貢献しています。カザフスタン国立銀行が当四半期最大の買い手となり、金準備は18トン増加し324トンに達しました※14。
ブラジル中央銀行は2021年7月以来の購入再開に踏み切り、9月に15トン追加して総保有量は145トンに増加しました※15。また、トルコ中央銀行は第3四半期に7トンを購入し、総保有量を641トンに拡大しました※16。
2025年通年の購入量は、過去3年間に見られた約1,000トンの水準には届かず、従来からの当社予想である約900トン近くになる見込みですが、それでも少なくとも1960年代以降で上位4番目の年間購入量となります※17。
価格上昇にもかかわらず第3四半期に購入が回復したことは、公的部門の需要が戦略的性質を持つことを改めて示しています。実際、年初来最大の買い手であるポーランド国立銀行は、準備資産に占める金の目標比率を20%から30%に引き上げました※18。
こうした記録的な水準の中央銀行需要が常態化する一方で、金ETFへの資金流入や民間向け金地金・金貨の購入が残存需要ギャップの一部を吸収しています。
