いつまでも輝く女性に ranune
「もうお金は送らないで…」年金月10万円・85歳母に安否連絡も、3日後に急逝。毎月欠かさず仕送りした2人の娘が、遺品整理でみつけた〈30年分の愛〉【FPが解説】

「もうお金は送らないで…」年金月10万円・85歳母に安否連絡も、3日後に急逝。毎月欠かさず仕送りした2人の娘が、遺品整理でみつけた〈30年分の愛〉【FPが解説】

苦労して育ててくれた親に、少しでも楽をしてほしい。そんな思いで毎月仕送りを続ける子どもたちは少なくありません。しかし、親にとってそのお金は「使うもの」ではなく、「守るもの」になることも。本記事では、Aさんの事例とともに、相続において最も重要なことについて、社会保険労務士法人エニシアFP共同代表の三藤桂子氏が解説します。

シングルマザーとして子育てに奔走した現役時代

Aさんは妹と2人姉妹。両親は父のギャンブルを理由に40代のときに離婚。母は女手一つで姉妹を育ててくれました。その後、風の便りで父親は亡くなったと聞きます。

母は娘たちが独立するまではと、身を粉にして働き、おかげでAさんは短期大学を卒業し、一般企業に就職。妹も専門学校に通い、看護師になることができました。Aさん姉妹は母に深く感謝し、「母の老後は姉妹で仕送りをして楽してもらいたい」と話していました。

母の現役時代は、子どもたちの学費等のため、働きづめの毎日でした。ダブルワークは当たり前、ときにはトリプルワークをこなし、寝る時間も多くて5時間程度。体調を崩すのではと心配する毎日でしたが、それでも母は、娘たちが希望する進路に進めるよう、姉妹とも平等に接してくれました。

苦労をかけた母への恩返し

母の老後の年金は約120万円、月額にして約10万円です。総務省統計局の2024年の家計調査報告において65歳以上の単身無職世帯(高齢単身無職世帯)の平均消費支出は月14万9,286円となっています。節約すればなんとか生活できるかもしれませんが、近年の物価の高騰を考えると、心配は尽きません。

母は日ごろから、「2人きりの姉妹なのだから、仲良く。いざというときは助け合ってほしい」といいつづけていました。そのため、進路は違っても、姉妹は協力できる関係性を築けており、母が仕事を引退したときは妹と話し合い、いままでの苦労を労うためにも、毎月一人3万円ずつ仕送りをすることを決めました。

「仕送りはいらないよ」母の遠慮と田舎暮らし

Aさん姉妹は就職したてのころは独身だったため、自分たちの生活を切り詰めて仕送りをすることができましたが、それぞれ家庭を持ち、子どもが生まれて教育費等にお金がかかるようになると、仕送り額は2万円に減額せざるを得ませんでした。子どもたちの事情を察している母は、「もうお金は送らないで……大丈夫だから」といいます。

それでもAさん姉妹は「少しでも」と、時には1万円になることもありましたが、仕送りを続けました。母が年金暮らしになると、「都心は家賃や物価が高いから」と、都心から離れた自身の田舎へ移住します。Aさんたちは、その分交通の便が悪くなり、余計にかかる経費もあるだろうと心配しました。

電話口で母は、「もともと地元だし、気楽だわ。近所の方はみんな親切で空気も美味しい。病気せずに頑張っているからお金は送らないで大丈夫」と笑って話していました。

あなたにおすすめ