
相続に関して「遺言さえあれば安心」と考えている方もいるでしょう。しかし、遺言内容が偏っていたり、遺産配分の理由が不明瞭だったりする場合は、かえって親族間の争いのもとになることもあります。円満な相続を実現するためには、遺言書の信頼性を向上させる工夫が非常に重要になります。本記事では、廣木涼氏の著書『突然の看取りでも慌てない!亡くなった後の手続と相続のすべてがわかる本』(ソーテック社)より、トラブルを回避するための「遺言の仕方」について解説します。
感謝の気持ちが、“親族間の不公平感”に変わるとき
相続の場面でよく起こるのが、「生前にどれだけ支援を受けたか」に対する親族間の認識の違いによる不満です。「兄は留学費用を出してもらった」「妹は私立大学に通わせてもらった」「弟は家を買うときに援助してもらった」などどれも親の厚意として行われた支援のはずですが、いざ相続となると「自分には何もなかった」と不公平感が芽生えることがあります。
こうした感情は、「隣の芝生は青い」心理にも近いものです。本人にとってはなんの気なしに受けた援助でも、他の兄弟姉妹から見れば「得をしている」と映ることがあります。記録が残っていない、親からの説明がなかった、そんな些細な行き違いが、不信感や対立の火種になってしまうのです。
[図表1]不公平と思ってしまう原因
思い込みや行き違いが、関係をこじらせる相続
「相談されていない」「勝手に進められた」といった不満も大きなトラブルのもとになります。
たとえば、長男が中心になって遺産の調査や手続きを進めていたとしても、他の兄弟姉妹が「内容を知らされていない」と感じられれば、不信感が生まれかねません。
不動産の扱いも揉めやすいポイントです。売却、誰かが住む、共有名義など意見が割れやすく、「自分は損をしているのでは」と疑念が生じることもあります。
遺言書があるから大丈夫、財産が少ないから安心と、そう思っていた家庭ほど、かえって小さな誤解や不満が大きな対立に発展することもあります。
相続は、思っている以上に「感情」が関わるもの。だからこそ、少しでも早い段階で情報を整理し、家族で話し合っておくことが、争いを防ぐ第一歩になるのです。
