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「この遺言書、本人が書いたの?」疑われる有効性…“自筆証書遺言”が招きやすい相続トラブル

「この遺言書、本人が書いたの?」疑われる有効性…“自筆証書遺言”が招きやすい相続トラブル

遺言があっても家族が揉める理由

偏った遺言はむしろ争いの火種になる

「遺言さえあれば安心」と思う方は多いのですが、実際には遺言が原因で家族の対立が深まることもあります。

典型的なのは、財産の分け方が特定の相続人に極端に偏っている場合です。たとえば「全財産を長男に相続させる」という内容なら、他の兄弟姉妹から「なぜ自分には何もないのか」「生前に説明もなかった」と不満が噴き出しやすく、結果として感情的な争いに発展します。法的に有効な遺言であっても、納得できない気持ちは簡単には収まりません。

特に兄弟姉妹の間に生前からの不公平感や遺恨があると、遺言が火に油を注ぐ役割を果たしてしまうことすらあります。
 

[図表4]偏った遺言は争いのきっかけにも

自筆証書遺言は疑念を招きやすい

自筆証書遺言は簡単に作れる一方で「本当に本人が書いたのか」「同居していた家族に書かされたのではないか」と疑われやすい点に注意が必要です。
 

[図表5]遺言では理由のある財産の分け方を


病床で作成された遺言や、内容が偏った遺言は特にその傾向が強くなります。その結果「遺言に従うべき」という立場と「納得できないので協議したい」という立場が真っ向から衝突し、相続が長期化してしまうことも珍しくありません。

遺言は強い効力を持つ大切な手段ですが、受け取る側の気持ちや納得感を欠くと、かえって争いの原因となってしまうのです。

「書いてくれてよかった」と思われる遺言にする工夫

相続内容の「理由」を添えることで理解が深まる

遺言を争いのきっかけにしないためには、内容に「なぜそうしたのか」という理由を添えることが大切です。

たとえば「長男に自宅を相続させる」とだけ書くと不満を招きますが、「同居して介護を続けてくれたから」「家や土地を守り続けてほしいから」と背景を記すことで、他の相続人も納得しやすくなります。

長女に現金を多めに残す場合も、「これまで家業を支えてくれたから」「近くに住んで日常的に助けてくれたから」と理由を明記すれば、多少の不均衡があっても受け入れられる可能性は高まります。

こうした想いは遺言の付言事項に盛り込むほか、家族への手紙や動画、あるいは生前の説明の場を設けるなど様々な方法で伝えることができます。
 

[図表6]理由を付言事項にして思いを伝える

作成方法を工夫して信頼性を高める

形式面でも工夫が重要です。自筆証書遺言は手軽ですが疑念を招きやすいため、公正証書遺言や法務局の保管制度を利用することで、「書かされたのでは」という不安を減らせます。

また、遺言の中に過去の恨みや批判的な言葉を残すのは避けるべきです。感情的な表現は家族を傷つけ、かえって争いを激化させる恐れがあります。

さらに、財産目録を整理して不動産や預貯金の情報を明記しておけば、手続きがスムーズになり実務面でも役立ちます。遺言は財産の行き先を指定するだけではなく、家族への想いを形に残すものです。理由を示し、形式を整え、気持ちにも配慮することで、遺言は「争いを防ぐ道具」から「家族を守る贈り物」へと変わっていきます。
 

[図表7]公正証書遺言と自筆遺言保管制度

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