相続がまとまらないときの流れ
遺産分割協議は、相続人全員の合意がなければ成立しません。感情的な対立や、寄与分・特別受益を巡る意見の違いから話し合いがまとまらないと、最終的には裁判所に委ねざるを得なくなります。相続がまとまらないときの流れを簡単に整理しましょう。
まずは家庭裁判所での「調停」
相続が話し合いだけで解決できないときには、まず家庭裁判所で遺産分割調停を行います。調停では調停委員が間に入り、相続人全員の意見を聞きながら合意点を探ります。裁判のように勝ち負けを決める場ではなく、話し合いを公的に支援する仕組みです。ただし、期日ごとに裁判所へ出向く必要があり、時間や費用もかかります。
調停は数か月から1年以上に及ぶこともあり、精神的な負担も小さくありません。
調停が不成立なら「審判」へ
調停で折り合いがつかなければ、裁判官が審判を下す遺産分割審判で「誰がどの財産を相続するか」を強制的に決めます。ただし、裁判官の判断は必ずしも希望どおりではなく、不満が残ることもあります。
さらに厄介なのは、遺産分割そのもの以外に争いが広がる場合です。たとえば「どこまでが遺産にあたるの」「遺言は有効か」といった前提部分で揉めれば、別に訴訟を起こす必要が出てきます。場合によっては既に済んだ協議の無効や、相続人による財産の使い込みをめぐって裁判になることもあるのです。
そこまで進むと相続は長期化し、弁護士費用や心労の負担も大きく、家族関係の修復はますます困難になります。だからこそ協議の段階で歩み寄り、全員が納得できる形を探ることが何より大切なのです。
[図表8]相続がまとまらないときの流れ
廣木涼
司法書士法人アベリア代表
行政書士事務所アベリア代表
