いつまでも輝く女性に ranune
「何が不満だった?」結婚5年目、突然家を出た妻。夫が気づけなかった“異変”とは

「何が不満だった?」結婚5年目、突然家を出た妻。夫が気づけなかった“異変”とは

男と女は全く別の生き物だ。それゆえに、スレ違いは生まれるもの。

出会い、デート、交際、そして夫婦に至るまで…この世に男と女がいる限り、スレ違いはいつだって起こりうるのだ。

—あの時、彼(彼女)は何を思っていたの…?

誰にも聞けなかった謎を、紐解いていこう。

さて、今週の質問【Q】は?

▶前回:一緒にスマホを見ていたとき、LINEの通知で見えたメッセージ。交際3年で知った、彼女の秘密とは


“結婚がゴール”なんて言葉を聞くけれど、あれは本当に間違っている。結婚はゴールではない。特に男性にとっては、「2人で始める新しい生活」という意味に過ぎない。誰と結婚するかで、その日を境にすべてが変わるのだ。

あれは、つい3日前のこと。

「ただいま……って、え?」

出張から帰って家のドアを開けた瞬間、目に飛び込んできたのは散らかった部屋と、山のように積まれた洗濯物だった。

「若菜、いる?」

妻・若菜の姿はどこにもない。代わりに、ダイニングテーブルの上には一枚のポストイットが貼られていた。

『しばらく実家に帰ります。若菜』

「なんでだよ……」

ただ、まったく心当たりがないわけではない。つい1ヶ月前、若菜から「もうあなたにご飯は作らない」と宣言されたばかりだったからだ。


Q1:結婚当初から起こっていた、夫婦間での認識の違いは?


若菜とは、社会人3年目、お互い25歳だった夏に出会った。いわゆる食事会で出会い、意気投合し、数回のデートですぐに交際することになった。

そして交際して2年目の夏、ちょうどコロナ禍だったこともあり、一緒にいる時間を“家族”として過ごそうと決め、僕たちは籍を入れた。



当時、僕は大手町の家に住んでいたのだが、結婚を機に、二人で学芸大学駅近くの50平米の1LDKへと引っ越した。

「ちょっと狭いけど…二人暮らしだからいいよね」
「うん。龍太くんと一緒に住めることだけで、じゅうぶん嬉しいから」

そんな可愛いことを言っていた若菜が今では懐かしいくらい、僕たちは幸せだった。

コロナ禍で遠出をすることもできず、盛大にみんなを集めて結婚式…などもできないタイミングだった。

それでも僕たちは近くの公園を散歩したり、時には美術館巡りをしたり。また時間があるので家でじっくり料理をしたり…と、おうち時間を自分たちの方法で楽しめていたと思う。

そのタイミングで若菜の仕事はフルリモートとなり、週5日家で働いていた。

「いいなぁ、1日中家にいれて」

僕も適度にリモートをしていたけれど、それでもたまに出社しなくてはいけない。ずっと家にいることができる若菜が、純粋に羨ましくもあった。



「寒い冬とかは、ありがたいよね〜。もう出社スタイルに戻れないかも」

そう言って笑う若菜。その間、「家にいる時間が長いから」という理由で、掃除も料理も、いつの間にか若菜がしてくれるようになっていた。

「若菜、本当にありがとう。何かできることがあったら言ってね」
「うん。まぁ今の間は時間があるから。子どもとかができたら変わると思うから、その時は宜しくね」
「もちろん!そこは任せてください」

そんな話をしていた。

もちろん、お互い働いている以上、家事は分担制だと思っている。だから僕だってお礼を言うだけではなく、僕が週末は風呂掃除担当だった。

それ以外にも一緒に買い物へ行って重い物を持つようにしていたし、ゴミ出しだって、ちゃんとしていた。

そして時は経ち、昨年末のこと。

若菜の会社が、フル出勤になった。その予兆はあったものの、実際に週に5日出勤となると若菜は面倒くさそうにしている。

「転職しようかな…」

そう嘆く若菜に、僕は聞いてみる。

「いいんじゃない?でも、何の仕事をするの?」
「またIT系かな」
「そっか…でもせっかく、今のキャリアがあるのにもったいなくない?出勤するのが、そんなに嫌なの?」
「そうだよね、別に我慢すればいいもんね」
「うん。頑張りなよ」

結果として若菜も出社することになった。

しかし今から思い出すと、若菜がフル出社になってから、徐々に我が家は変わり始めていたのかもしれない…。


Q2:妻がすべてを放棄したくなった理由は?


まず、家が一気に汚くなった。洗濯物は溜まっていくし、食事はデリバリーが増えていく。

ただ、それでも構わなかったので、僕は何も言わなかった。そもそも、僕はあまり細かいことを気にしない性格なので、気がついた方が、時間がある方がやる…という僕らのスタンスに満足していた。

「龍太くん、ごめんね」
「何で謝るの。若菜だって仕事頑張っているんだし。それに食事は、デリバリーで全然いいじゃん」
「そう言ってくれると助かる」

僕は決して若菜を責めたりしていない。

また去年から僕の方も会食が増え、お互いに帰る時間が読めないことが増えた。家で食事をとることも少なくなってしまい、顔を合わせて話すのは寝る前くらいだ。

むしろ僕が遅くなると、会話をしないまま若菜が先に寝ていることもあった。

ただそれでも双方よかったし、若菜に至っては「夜ご飯作る手間が省けた」なんて言って喜んでいた。



しかしある日のこと。

「ただいまぁ」

玄関のドアを開けると、どこか懐かしい、“家庭的な香り”の代名詞のような、焦がし醤油のようないい香りがする。

「あ、龍太くんお帰り。遅かったね。私もさっき帰ってきて急いで用意したから、ちょうど良かった。夜ご飯、食べるでしょ?」

そう言う若菜の後ろにあるダイニングテーブルには、手料理が並んでいる。しかし最近お互い時間も読めないし、食事もバラバラなことが多かったので、今日は帰宅前に軽く食べて来てしまった。

「ごめん、今日は外で食べてきちゃって…」
「え〜また?先週末、今日はお家で食べるって龍太くん、言ってたじゃない」
「ごめん、すっかり忘れてた」
「もう。せっかく作ったのに…しかもこれで何度目?でも龍太くん、作り置きは食べないもんね」

僕は母親が出来立ての料理しか出さなかったため、どうも作り置きというものが苦手だった。それは若菜も、よく知っている。

「うん、そうだね」
「わかった、龍太くんの分は私が冷凍して明日以降で食べるから。ただせめて、ご飯を食べるのか、食べないのかの連絡くらいはして欲しいってこの前も言ったよね?」
「そう言われてもなぁ。事前に予定がある時はちゃんと伝えるようにするけど」

それから僕なりにトライはしてみたし、この件については何度も謝った。

それに、ご飯がない時も僕は怒ったりもしていない。

「ただいまぁ…お腹空いた〜」

その日は、会食が入っていたのだが先方の体調不良で、急遽キャンセルになってしまったのだ。

「龍太くん、こんな直前に連絡もらっても、今日は帰りにスーパー寄ってないし、食材も何もないからご飯作れないよ?うどんとか、冷凍の鮭とかならあるけど…」
「気にしないで。適当にデリバリー頼むから。せっかくだし、最近食べられていなかった餃子とか頼んじゃおうかな」
「龍太くん、楽しそうだね」
「うん。たまに取るデリバリーって楽しくない?若菜も、何かいる?」
「いや、私はいい」
「そっか」

若菜にとって、負担がないようにデリバリーを頼んだ。しかし、何かが気に食わなかったのだろうか。

この後、しばらくして家へ帰るとご飯が何も用意されなくなった。



「え?若菜、今日の晩御飯は…?」
「私、もう龍太くんにご飯作るのやめるから」
「え?」

この時もかなり衝撃的だった。

しかしそれから半年くらいすると、段々と洗濯物も溜まっていき、僕が洗濯やゴミ捨てなどの家事をするようになった。

「あのさ、若菜。それって夫婦の役割放棄してない?」

あまりにも限界だったので、一度言ってみたことがある。すると若菜はすごい形相で睨みつけてきた。

「夫婦の役割って、なに?お互い、そこは平等でしょ」

そしてしまいには、妻業をボイコットして家を空けて実家へ帰ってしまった若菜。

一体何が不満なのか、この先僕たち夫婦がお互い平和に楽しく暮らせる日は来るのだろうか…。


▶前回:一緒にスマホを見ていたとき、LINEの通知で見えたメッセージ。交際3年で知った、彼女の秘密とは

▶1話目はこちら:「あなたとだったらいいよ♡」と言っていたのに。彼女が男を拒んだ理由

▶NEXT:11月30日 日曜更新予定
妻が妻業を辞めた理由は?


配信元: 東京カレンダー

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