◆自分のアウトラインを外側から埋めてしまわないで
——現在は、高橋さんが先輩の立場になっています。最後に、いま停滞していると感じている、人生の後輩である読者たちに、なにかアドバイスをもらえませんか。高橋:こちらの読者の方はおそらくサラリーマンの方が多いですよね。そうなると僕に言えることはないんじゃないかと思いますが……。僕は組織に入ったことがないので、あくまでも個人主義でいられますから。自分のモチベーション次第で自分を持っていける。だから組織のなかで頑張っている人にかける言葉となると難しいです。
言えるとするなら、その業界や働き方が“自分に合うか合わないか”というのは、みなさんそれぞれにあると思います。よく聞く言葉ですけど、もしも停滞していて、そこから抜け出したいなら「自分を活かせる環境を探したほうがいい」とは思いますね。ひとつの決まった場所にいる必要はない。
――外に出ていくのもなかなか勇気が要りますが。
高橋:自分のアウトラインを外側から埋めてしまうと、自分の脱ぎ方がわからなくなると思います。自分というものが形作られちゃって、逆に縛られてしまう。そうすると何もできないと思い込んでしまう。そこからいかに抜け出して、環境を破り、肯定していくかが大事なんじゃないでしょうか。
決して大きなことじゃなくていいんですよ。仕事に限らず、普段とは違うものを食べてみたり、違うものを着てみたり、違う人と会ってみたり。そこから何か生まれるかもしれない。何をやっても変わらないなら、それが自分だし。
僕の時代はいかに良い生活、サクセスストーリーを手にするかが大事という考えがあったけれど、いまはどんな生き方をしたいかで仕事を選ぶ時代な気がします。ハードなところへいって切磋琢磨してしんどい思いをするのが好きか、これが十分と思える生き方があるなら、それでいいとも思います。とにかく他人と比較する必要はありません。
——良いお話をありがとうございました。
<取材・文・撮影/望月ふみ>
【望月ふみ】
ケーブルテレビガイド誌の編集を経てフリーランスに。映画周辺のインタビュー取材を軸に、テレビドラマや芝居など、エンタメ系の記事を雑誌やWEBに執筆している。親類縁者で唯一の映画好きとして育った突然変異。X(旧Twitter):@mochi_fumi

