◆優先席で缶ビールと大声通話

「会話は周囲に丸聞こえで、他の乗客は明らかに迷惑そうな表情でした」
周囲の乗客が視線を向けても男性は気にする様子もなく、むしろ声はさらに大きくなっていったという。付近には年配の男性が立っている状況で、誰もが“席を譲ってあげてほしい”と思っていた。
しかし、そんな状況が変わったのは、近くに立っていた体格の大きい男性の“一言”がきっかけだった。
「男性は背が高く肩幅も広く、見た目に迫力がありました。彼にそっと近づいていくと、周囲の乗客の視線も自然とその男性に集まりました」
◆男性の重たい“一言”
この男性は怒った表情を見せることなく、むしろ落ち着いて冷静に、そして低めの声で「ここ、優先席だぞ」と一言だけ伝えた。「たった一言ですが、効果は絶大でした。その瞬間、会社員は驚いた表情で固まり、慌てて通話を切り、缶ビールを鞄にしまいました」
ようやく周囲の目線にも気づいたのか、うつむいたまま立ち上がり、軽く頭を下げるような仕草をしてから、目の前に立っていた年配の男性に席を譲った。
「年配の方が座ると、周囲の乗客もほっとして、ようやく落ち着いた雰囲気になりました」
勇気ある一言が、場の空気を大きく変えることがある。

