◆もはやゲーム性は楽しんでいない
ゲームを始めて体に変化が現れたことで、すっかり日々の習慣として定着した1日50分のプレイ。体型管理のためだったのが、ある時点からはゲーム内の数値も意識するようになったそうだ。「レベル99を達成して『この先どうなるんかな?』と思ったんです。そのまま続けてみると100を超えたので、まだ先があることを知りました。
さらに続行し、ゲーム開始から2年後くらいにレベル999になって、『まだ進むんかな』と思っていたらカンストでした。消費カロリーも同時期にカンストしました。なので、これらの数字が動かないままの状態で、もう3年くらい続けています」
ゲームも筋トレもダイエットも、数字の変化が大きなモチベーションになりやすく、これが筋トレがゲーム化された醍醐味でもあろう。それを失ったまま3年も継続するのには、別の面白さや動機があるのだろうか。
「正直言うと……今は何も面白くないですね(笑)。やりながら、『任天堂さん、早くアップデートして』と、本当に日々願ってますよ」
繰り返しになるが、本来は運動と敵を倒すことが連動しているのがこのゲームの魅力である。だが、もはやゲーム性を楽しめる余地は残っていないという。
「フィールド内を走り続けているんですが、全ボスを何年も前に倒しきったので、もうどこのエリアのゴール地点に行ったところで誰もいないんですよ。チラホラいる敵も、ザコすぎて攻撃を食らえないので、最後に攻撃されたのが3年前くらいですね。だから、何を目指しているかわからない状態(笑)」
◆人一倍の執着も「普通のことだと思っていました」
楽しさはないにもかかわらず、5年間毎日プレイし続ける姿は、もはや常人には理解不可能な行動原理すら感じてしまう。しかし、異様なまでの執念を示すエピソードは、まだまだ序の口であった。「僕は大阪が拠点なんですが、東京などで仕事があると困りますね。子供がSwitchをやるので、持ち出せないんですよ。だからホテルなんかでは、リングを持っているマイム(ふり)をしながら、脳内でゲーム画面を再生して、イメトレだけでやっています」
ゲーム機がなくても脳内プレイで断行するとは、もう「奇行」と評するのになんの不足もないだろう。だが、肥後さん本人は実にあっけらかんとしているのだ。
「普通のことだと思っていたので、特に誰にも話さなかったんです。だけど先日、会話の流れでロングコートダディの兎に話したら、すごい興奮してめちゃくちゃ掘り下げてきたので、『これ、変なんだ!』って気づきました(笑)」

