
一対一の「在宅介護」が生み出す閉塞感は、やがて家庭内での高齢者虐待に繋がることも。介護の負担をひとりで抱え込む前に、介護者は専門家などの適切なサポートを受けることが重要です。本記事では、介護・暮らしジャーナリスト・太田差惠子氏の著書『親が倒れた!親の入院・介護ですぐやること・考えること・お金のこと 第4版』(翔泳社)より一部を抜粋し、「親と子」のマンツーマン介護の危険性と、家庭内での高齢者虐待について解説します。
「シングルは身軽」と介護を抱え込むのは危険
介護要員となりやすい「シングル」
近年、シングルのまま親と同居している子は増えている傾向にあります。そして、同居する親に介護が必要となると、その者が中心となって介護をするケースが多くあります。
一方、親だけの世帯で子が複数いる場合にも、シングルの子が「主たる介護者」になりがちです。きょうだいはもちろん、親戚、さらには当事者である親もそれを期待します。確かにシングルなら、別居している場合でも引っ越すのは1人なので身軽な面もあるでしょう。
しかし、「シングル」には配偶者がいないので、一輪車走行です。当人はもちろん、周囲の人もその実情を理解して押し付けず、皆で負担を分け合う体制を築くことが大切です。
一対一の介護は虐待を生みやすい
シングルの子が介護を行う場合、親と一対一で向き合うことになり、閉塞感が生まれやすいです。介護保険をはじめとするさまざまなサービス、制度の情報に巡り合う機会も乏しくなり、結果として大きなストレスを背負うことにつながることも。
[図表1]家庭内での高齢者虐待
虐待の加害者となるのは「息子」がもっとも多く約4割。また、家族形態を見るとシングルの子との同居(「未婚の子」「配偶者と離婚・死別等した子」)が約半数。「夫婦のみ」を合わせると、7割以上が二人暮らしです。
シングルに限らず、「女性だから」「長男だから」という周囲からの圧力を察知することがあるかもしれませんが、1人だけで介護を担うことは大変危険だと認識しましょう。
[図表2]高齢者への主な虐待
