「いつまで親を1人にさせておくんだ」と言われる…
介護は家族だけで行うものではない
介護は家族だけでなく、社会全体で行うべきだという考え方から、介護保険制度が誕生しました。そして、現在ではさまざまなサービスが存在し、ケアマネジャーをはじめとする介護の専門家がサポートしてくれます。
とはいえ、「親のことは子どもが看て然るべき」という考え方も根強く残っています。親が倒れて入院・介護となっても、子は自身の生活があるため24時間体制で親のそばにいることはできません。すると、とても協力的に手を差し伸べてくれる親戚や、親のご近所さんがいる一方で、「仕事と親とどちらが大切なんだ」などとプレッシャーを与えてくる人もいます。
遠く離れて暮らしているケースでは、「いつまで、親を放っておくのだ」と責められることもあります。子は言われるまでもなく罪悪感と格闘しており、周囲の声が離職への引導となる場合もあります。「仕事を辞めて親の介護に専念しよう」と。しかし、そのような決断をしても、今後うまくいくとは限りません。
[図表3]手助・介護に関する相談のうち、相談して役に立った・助けになったと思う相談先(複数回答)
外野の声は聞き流す
親の入院・介護に十分かかわれずに罪悪感を抱くという体験は、大なり小なり通る道だと想定しておくといいでしょう。そんなとき、優しく協力を申し出てくれる人の手は、ありがたく借りましょう。
ちょっと親の様子をのぞいてくれたり、声かけしてくれるだけでも、とても心強い存在になります。一方、責める人の声は聞き流すのが一番です。
周囲からの圧力で本意ではない行動を取ると、後々後悔することになります。大切なのは、親と子で、これからの方向性について話し合い、理解し合えていること。親は、自分のために子が大切にしている何かをあきらめることを望んではいないでしょう。口は出しても手は出さない人たちの言葉を、真に受ける必要はありません。
ただし、今後長期化するかもしれない親の介護期間には、そうした人たちにも何か世話になる可能性もあります。ここは喧嘩腰にならず、大人の対応で、にっこり笑顔で聞き流すことが得策です。
太田差惠子
介護・暮らしジャーナリスト
