
小さな葉に美しい模様、凛とした花。原種シクラメンは、冬の庭や玄関先をさりげなく、けれど長く彩ってくれる存在です。丈夫で手間がかからないのに、毎年咲き、どんどん球根が太って花数が増えていく。──そんなコスパのよさも魅力。この記事では原種シクラメンを長年育ててきたガーデニストの面谷ひとみさんに庭植え・鉢植えのコツを伺います。
原種シクラメンとは? 魅力と園芸品種との違い
私はガーデニングをするとき、シクラメンを「室内用シクラメン」「鉢植え用ガーデンシクラメン」「庭植え用原種シクラメン」というように3つに分類して用途ごとに使い分けています。
室内用シクラメン

古くから贈答用の鉢花として親しまれている園芸品種のシクラメンです。5〜6号鉢(直径15〜18cm)に植わった状態で販売されていることが多く、豪華に仕立てられています。寒さには弱いので、室内の窓辺に飾って楽しむのに最適。夏にしっかり休ませて秋からまた育てれば、翌年も咲きます。ただし、外で夏越しできる環境が必要です。
鉢植え用ガーデンシクラメン

園芸品種のシクラメンの中から、比較的寒さに強い小型種を育成した品種群をガーデンシクラメンと呼びます。庭植えにできますが、霜や雪に当たると花が傷んで復活が難しいので、軒下など屋根がある場所で鉢植えや寄せ植えにするのに向きます。一般的に一年草扱いです。
庭植え用原種シクラメン

原種シクラメンは地中海沿岸の野山に自生する小型種です。霜にも強く、庭に植えっぱなしで毎年花を咲かせます。場所さえ合えば、球根がどんどん太って花数が増えていきます。もちろん、鉢植えでも育てることができます。その魅力は、
- 小さく素朴な花が愛らしい
- 葉の模様が美しい
- 夏に休眠する省エネ植物
- 手間をかけずに毎年咲く
など。
特に、落葉樹の下で他の草花が休んでいる季節に主役になれるのが大きな魅力。庭の冬景色に“静かなドラマ”を生み出してくれます。

原種シクラメンの育て方のキホン

原種シクラメンは丈夫で栽培しやすい球根植物ですが、生育サイクルが他の多くの植物と異なるので、まずは生育サイクルを知ることから始めましょう。
【原種シクラメンの生育サイクル】
原種シクラメンは種類によって開花期が異なりますが、夏に休眠して秋に芽吹き、冬〜春に葉で球根を太らせるというサイクルは共通です。


【原種シクラメンの季節ごとのお手入れ】
原種シクラメンは「少ない資源で生き延びる」性質が強いため、地植えは基本肥料不要。鉢植えは秋に少量の置き肥だけで十分。肥料のやりすぎは球根のトラブルにつながります。

■鉢植えのコツ(初心者におすすめ)
- 水やり:秋〜冬は控えめに、鉢土の表面が乾いたら
- 置き場所:明るい日陰(北向きの玄関先など)
- 肥料:緩効性の置き肥を秋に少量
- 鉢:やや浅いタイプが理想(球根が蒸れにくい)


■庭植えのコツ
- 場所:落葉樹の株元(夏は木陰、冬は光が入る理想環境)
- 土:水はけのよい土。腐葉土をたっぷり混ぜる
- 植え込み時期:秋(根が動き出すタイミング)
- 夏は:周りの落葉で自然に覆われ、放任でOK
- 肥料:基本不要。痩せ地を好み、肥料が多いと葉ばかり茂って花をつけにくい。養分過多は球根腐りのリスク

【押さえたい3原則】
| 失敗しないためのポイント | 理由 |
| 夏は断水して休ませる | 休眠期は水が多いと球根腐りの原因に |
| 水はけ・風通しのよい半日陰 | 蒸れと直射日光を避けて健全に育つ |
| 浅植えにする | 球根は地表近くで光を感じて成長する |

水はけと風通しをよくするために、庭では小高く土を盛った落葉樹の下に植えています。ガーデニングの最中に足を踏み入れると、土が踏み固められて、いつの間にか水はけが悪くなってきてしまうので、ところどころ石を置いてロックガーデン風にし、あまり足を踏み入れないようにも工夫しています。
