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『マツコの知らない世界』出演も契機に。フリーライターが「シュウマイで稼ぐ」と決意した理由

『マツコの知らない世界』出演も契機に。フリーライターが「シュウマイで稼ぐ」と決意した理由

◆専門家も専門店もない シュウマイは「ブルーオーシャン」

種藤さんのおすすめシュウマイ、「浦和クラフト焼売」。浦和のクラフトビール醸造所、椎茸農家、豚肉料理専門店がコラボして誕生した。「椎茸と豚肉の相性や大きさ、食べ応えなど、あらゆる要素が研究されています。シュウマイの概念を変える一品です」(種藤さん)
種藤さんのおすすめシュウマイ、「焼売酒場小川」の「岩中豚 特製焼売」。シェフは星付きフレンチ店出身。基本の岩中豚のシュウマイは4部位を選んで蒸しあげる。「味もさることながら岩中豚シュウマイ以外の種類の多さやつけだれの組み合わせも特徴的。羊シューマイ×トマトソース、鴨×ほおずきの辛子ソースなど、かなり攻めています」(種藤さん)
 その時点で、国内では紙からウェブへの移行がさらに進んでいた。

「それまで紙媒体で受けていた仕事がウェブに移行することも増えていきました。ただ単価を聞いてみると、ウェブは紙に比べて圧倒的に安い。『このままライターや編集者の仕事を続けていても行き詰まってしまう』という気持ちが大きくなっていきました」

 身の振り方に悩んでいたその時、ふと頭に思い浮かんだのが「シュウマイ」の存在だった。

「食関連の取材で、その土地の『名物シュウマイ』を食べることがあったんです。ギョウザについては色んな媒体で特集が組まれているのに、シュウマイには専門家がいない、専門店がない、専門団体もない。いわゆる『ないない尽くし』の状況であることにハタと気づきました」

 まずは全国各地の関連店を調べ上げ、’15年頃からは現地を訪れて食べ歩く「シュウマイ研究」をスタート。食べたシュウマイの記録は、Instagramにアップすることを習慣づけた。

「シュウマイの大きさや粗さ、具材などはお店によってまちまち。あえて『美味しい』は封印し、特徴を淡々と整理する中で、全国のシュウマイの特徴が見えてくるようになりました」

 始めは単なる「飲み屋の雑談」に過ぎなかったが、食べたシュウマイが100を越えた頃から、周囲からも一目置いた反応が増えていく。「これは面白いかも」と感じ、’16年頃から、「シュウマイジャーナリスト」の肩書を使い始めた。


◆TV出演を機に「シュウマイ活動」が本格化

シュウマイ好きを集めた「シュウマイ食べる会」も定期的に開催している
そして’18年、最大の転機が訪れる。SNSでの投稿を見た「マツコの知らない世界」(TBS系列)スタッフから、出演依頼が舞い込んだのだ。

「メールには『すぐに会ってほしい』とあり、最初は『詐欺だ』と思いました。まずは一度電話をした後、対面で会うことになったんです。指定の場所に行くとディレクターやプロデューサーが揃っており、『上に映像を見せる』とカメラも回されていました。実質上の『面談』でした」

 依頼が来た翌月に収録、翌々月にオンエアと目まぐるしい展開。それまではシュウマイ関連の案件はゼロだったのが、放映後に生活は一変した。

「各種媒体での取材・執筆依頼や、シュウマイ関連の商品PR・広報の依頼が一気に舞い込むようになりました。色んなメーカーからシュウマイが送られてくるので、自宅の冷凍庫が全部埋まってしまって、『我が家の冷蔵庫はシュウマイのためにある訳じゃない!』と妻にキレられたのもこの頃です(笑)」

 依頼の量や幅が広がったことから、’22年には一般社団法人「日本シュウマイ協会」を設立し、代表理事に就任した。現在は、「シュウマイ以外」の執筆・編集やウェブ制作仕事は個人名義で引き受けながら、シュウマイに関する仕事は社団法人として受ける形を取っているという。後半では、個人事業主が「法人」を作ることの利点や、ポリシーについてより詳しく掘り下げる。

【種藤潤】
シュウマイジャーナリスト、研究家、日本シュウマイ協会発起人。1977年神奈川県生まれ。大学卒業後、フリーランスとして取材執筆を行う。’15年頃からシュウマイ研究を開始。’18年5月と’21年10月、『マツコの知らない世界』(TBS)に出演。以後、さまざまなメディアでシュウマイについて語る。
’22年6月、シュウマイの活性化を、より多くの人や企業・団体とともに取り組むべく、「一般社団法人日本シュウマイ協会」設立。2月26日を「シュウマイの日」と定め、盛り上げるとともにイベントや百貨店でのシュウマイフェアの企画開催、シュウマイの監修やイベント、メディア出演等を行う。

<取材・文/松岡瑛理 撮影/山川修一>

―[フリーランスも知らないフリーランスの稼ぎ方]―

【松岡瑛理】
一橋大学大学院社会学研究科修了後、『サンデー毎日』『週刊朝日』などの記者を経て、24年6月より『SPA!』編集部で編集・ライター。 Xアカウント: @osomatu_san
配信元: 日刊SPA!

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