◆手元で資金を遊ばせるのはもったいない
一方で私が考えていたのは「手元に資金を遊ばせておくのはもったいない」ということ。大山さんとは真逆の発想で、「手元に貯金があると不安」なのです。そしてこれこそが差を産んだ大きなポイントとなりました。私は手元にある資金をとにかく使いたかったため、借入はもちろんしていましたが、元本として資金をドンドン投下し、その結果リターンが増え、さらに投下する資金が増えていく……という繰り返しを高速で行っていました。それに対し大山さんは、「貯蓄はあった方が良い」という価値観でしたので、「500万円も貯金ができた」と預金通帳を眺めていたのです。実はこれこそが20年間の投資で大きな差がついた要因となったのです。
一口に不動産投資と言っても、10年も経つと資産額に大きく差がつくケースが散見されます。そしてその差は決して「買ったときの不動産市況が良かったから」という理由だけではありません。「その10年間にどのような運用を行ってきたか」。これこそが大きな差を産むポイントなのです。
◆投資とは「明日は今日より資産が増えるもの」
投資とは「元本×利回り」です。たとえ利回り100%でも10万円しか投下しなければ、リターンは10万円にしかならず、500万円を4%で運用する投資商品のリターンである20万円に負けてしまいます。同様に「借りられるから」と頭金(元本)を投下しないで、借金だけで不動産投資を行っていれば、得られるリターンも相応でしかないのです。とはいえ、結果として資産額には差がありますが、大山さん自身、不動産投資をしなかった場合と比較すると大きく資産を増やしています。当初の目的でもある「老後の安心」も確保済です。そしてなにより「貯金がある」という安心感を得ながら日々過ごすことができました。
投資は「幸せになるため」に行うもの。不安と同居してやるものではありません。それぞれで幸せのカタチは異なりますから、それぞれのスタイルにあった方法で投資を進めればよいのです。
投資で失敗している人、苦痛を感じている人は、目的にあったやり方をしておらず、単に運用方法を間違えているだけです。そんな方は是非一度、投資のやり方自体を見直してみてください。投資とは「明日は今日より資産が増えるもの」だと考えています。そしてそれはインカムゲインのある投資でしか確信を持つことはできません。キャピタルゲイン狙いの投資では、「売却時の状況」に左右されてしまうためです。もし「明日は……。1年後は……。必ず資産が増えている」と思いながら過ごすことができれば……。そんな投資をしていれば幸せでしかないと思いませんか?
<構成/上野智(まてい社)>
【村野博基】
1976年生まれ。慶應義塾大学経済学部を卒業後、大手通信会社に勤務。社会人になると同時期に投資に目覚め、外国債・新規上場株式など金融投資を始める。その投資の担保として不動産に着目し、やがて不動産が投資商品として有効であることに気づき、以後、積極的に不動産投資を始める。東京23区のワンルーム中古市場で不動産投資を展開し、2019年に20年間勤めた会社をアーリーリタイア。現在、自身の所有する会社を経営しつつ、東京23区のうち19区に計38戸の物件を所有。さらにマンション管理組合事業など不動産投資に関連して多方面で活躍する。著書に『戦わずして勝つ 不動産投資30の鉄則』(扶桑社)、『43歳で「FIRE」を実現したボクの“無敵"不動産投資法』(アーク出版)

