ナンテンの実や葉の毒性と効能

さて、私たちの暮らしにも馴染み深いナンテンですが、その実や葉の意外な効用をご存じでしょうか? ここでは、ナンテンの実は食べられるのか、葉や実にはどのような特徴があるのかなどについてご紹介します。
ナンテンの実は毒性があるため安易に口にすると危険

ナンテンの実は野鳥の好物で、鳥が食べている姿を見かけることもありますが、じつは微量ですが有毒成分が含まれており、人間が安易に実や葉を口にすると危険です。ナンテンの実の有毒成分は、アルカロイド系のドメスチンやナンテニンなど。大量に摂取すると知覚や運動神経の麻痺などを起こす可能性がありますので、口にしないよう注意しましょう。一方、ナンテンの葉の部分は、アルカロイドのナンジニンが含まれ、大脳や呼吸中枢の興奮、後に麻痺などを起こす可能性があります。
ナンテンの実は咳止めなどの薬としても

ナンテンの実には咳止めの効果があります。ナンテニン(o-メチルドメスチシン)を多く含むナンテンの実は、「南天実」という名で、古来より鎮咳の生薬として知られていました。のどの調子が悪いときに、「南天のど飴」を口にしたことがある方も多いのではないでしょうか。ナンテンの実に含まれるナンテニンには以下のような効果が期待できます。
【ナンテンの実に含まれるナンテニンの効果】
- 気管平滑筋を拡張し、咳を鎮める
- 咳中枢の興奮を抑え、咳を鎮める
- 殺菌作用により、菌による気道の炎症を抑える
- 鎮痛作用により、のどの痛みを和らげる
ナンテンの葉には殺菌や防腐効果がある

先述のとおり、ナンテンの葉には、じつは殺菌や防腐効果があります。葉に含まれるアルカロイドのナンジニンは、有毒成分でもありますが、葉に含まれる量はごく微量のため、殺菌や腐食防止に効果があるのです。ナンテンの葉をお弁当などに入れると、彩りを添えるだけではなく、その殺菌や防腐効果を活用することができます。赤飯などの上にナンテンの葉をのせることも多いのは、こんな理由もあったんですね。ただし、口にはしないように注意しましょう。
ナンテンにまつわる言い伝え

ナンテンは古来より魔除けや厄除け、縁起のよい木だと信じられている木です。
中国では昔、ナンテンが病害虫である南京虫を寄せ付けないことから、厄除けの木として重宝されていました。邪気を払う力を持つ赤色の実をつけることや、葉が枯れない常緑樹であることから、ナンテンはアジア諸国でも魔除けや繁栄の象徴だと考えられています。
一方、平安時代の日本では、ナンテンは観賞用・薬用として用いられていました。厄除けや縁起木と見なされるようになったのは、江戸時代です。
江戸時代に入ると、玄関や門、鬼門に植えることで災難や厄が家に入らないようにする、魔除けの木として重宝されるようになります。反対に、ナンテンの木を切ると災いが起こると恐れられるようにもなりました。
現代の日本でもナンテンの言い伝えは守られています。新年や節分などの行事の飾りや、魔除けのお守りとしてナンテンを思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。
