ナンテンの品種は?
ナンテンといえば、赤い実を付けるものがイメージされますが、じつはいくつもの品種があります。主に縁起物として、園芸用の品種が長年にわたって改良されてきました。その結果、多くの種類が作られ、現在では30種類以上の南天が楽しまれています。ちなみに日本や中国を原産地とするナンテンは、1712年にケンペルによってヨーロッパにも紹介されています。欧米でもガーデン素材として利用されることもあり、野生化してしまった株が赤い実をたわわに実らせているのを目にすることもあります。
代表的なナンテンの品種
数多くあるナンテンの品種の中から、代表的なものについていくつかご紹介しましょう。
キンシナンテン(錦糸南天)

一般的なナンテンに比べ、葉が糸のように細いのが特徴。成長が遅く樹高も低い。
シロナンテン(白南天)

シロミ(白実)ナンテンとも。果実は熟しても赤くならず、また葉も紅葉しない。やや黄色を帯びた白色の品種。
オタフクナンテン(お多福南天)

樹高が低くグラウンドカバーに利用されることが多い。矮性のナンテンはほとんど花や実は付かないが、四季によって紅葉する葉が特徴。とても丈夫で枯れにくい。
イカダナンテン(筏南天)
葉柄が組み合わさって、筏(いかだ)のように見える。
オリヅルナンテン(折鶴南天)
通常の南天よりも真っ赤に紅葉する。柄が曲がったり、葉がよれたりする珍しい品種。葉が密集し、まるで折り鶴のように見えるため、折鶴南天と名付けられた。
フジナンテン(藤南天)
黄色の実を付ける品種で、実が熟れると薄紫色になる。
ナンテンの栽培12カ月カレンダー
開花期:6~7月
観賞期:11~2月
植え付け:2〜3月
植え替え:2~4月
肥料:3~4月(鉢植え)、2~3月・12月(地植え)
剪定:3月~4月上旬
種まき:4月頃
ナンテンの栽培環境

日当たり・置き場所
ナンテンは一日のうち数時間だけ日光が当たる、半日陰を好む植物です。強い西日が当たる場所は避け、午前中の穏やかな陽光が差すような場所に植えましょう。
また、耐陰性があり日陰でも育つナンテンですが、日当たりが悪すぎる場所に置くと、実付きが悪くなります。実をつける時期になっても実があまり多く付かないと感じたら、置き場所を考え直しましょう。
耐寒性・耐暑性
ナンテンは、耐寒性・耐暑性がある植物で、関東地方以西の地域では、屋外で冬越しができます。なかでも、矮性品種のオタフクナンテンは耐寒性に強く、鮮やかに赤く色づく紅葉も楽しめます。
ナンテンの育て方
用土
ナンテンは通気性・水はけがよく、適度な湿度を保つ土が適しています。通水性と保湿性を兼ね備えた、やや粘土質の土がおすすめです。土を用意する際には赤土や腐葉土を用いて、肥沃な用土をつくりましょう。
水やり
ナンテンを地植えにした場合、基本的に水やりは必要ありません。夏場に何日も乾燥が続くようであれば水をやりましょう。鉢植えの場合は、表面の土が乾いたらたっぷりと水をやります。夏場は水切れに注意しましょう。
肥料
肥料はさほど必要としませんが、花付きや実付きをよくするためには、冬に鶏ふんなどの有機質肥料と、緩効性の化成肥料を混合したものを施すとよいでしょう。鉢植えの場合は、植え替え時にカリやリン酸を多めに含む肥料を用土に混ぜておきます。
注意する病害虫
ナンテンは丈夫で育てやすい樹木で、病害虫の被害を心配する必要はほとんどありません。発症しやすい病気には、モザイク病、葉枯病、すす病などがあります。モザイク病は、葉が縮れてモザイク状になるもの、すす病は、カイガラムシにともなって発生します。
ナンテンにつく害虫としては、カイガラムシやハマキムシなどが一般的です。初夏から秋にかけてはカイガラムシが発生することがあります。ハマキムシは、成葉に発生するが被害は少ないので、あまり気にしなくてもよいでしょう。
ナンテンの詳しい育て方
苗の選び方
ナンテンの苗を選ぶ際には、枝ぶりや葉のつき方に注目しましょう。ボリュームがあり、樹形が整っている苗がおすすめです。
またナンテンにはさまざまな種類があり、花や葉の色・形が異なります。好みや生育環境が適しているかどうかも、選ぶポイントです。
植え付け・植え替え
ナンテンの植え付け適期は3~4月。通気性や水はけがよく、適度な湿度を保つ土に植え付けます。地植えにする際には、事前に腐葉土などの有機物を土によく混ぜておくとよいでしょう。鉢植えの場合は、苗よりも一回り大きい鉢に、鉢底石、土、苗の順番に植え付けます。植え付けが完了したら、水をたっぷり与えましょう。鉢植えは、2~3年に1回の頻度で植え替えをするとよいでしょう。
剪定
ナンテンの剪定適期は2~4月、赤く熟した実が落ちた後が適しています。開花時期も剪定は可能ですが、実がなるはずの枝を切ってしまうこともあるので、心配な場合は初春~春に行いましょう。
剪定する際は、以下の道具を用意します。
- 軍手
- 剪定バサミ
- 剪定ノコギリ
細い枝には剪定バサミ、太い枝には剪定ノコギリを使います。ケガを防ぐため、軍手を着用して選定しましょう。また、太い枝に無理に剪定バサミを使うこともケガにつながるので、避けてください。
剪定する枝は、枯れ枝や細く生育が悪い枝です。枝が過密になっていて風通しが悪い場所も、適宜切りましょう。
また一度花や実をつけた枝は、今後花が咲いたり実をつけることはありません。新しく伸びる枝や、これから花や実をつける枝に栄養を届けるため、花や実が終わった枝も剪定します。
剪定のときには、これから花をつける枝を切ってしまわないように注意しましょう。誤って切ると、花付きや実付きが悪くなり、さみしい見た目になってしまいます。
増やし方
ナンテンを増やしたいときには、次のような方法があります。
【種まき】
植物の増やし方として一般的な種まき。ナンテンの場合は、乾かすと発芽率が下がるため、晩秋に種子をとって皮をむき、すぐに播くとよいでしょう。
【挿し木】
挿し穂と呼ばれる枝を切り取り、それを土に根付かせて新しい株を作る挿し木。挿し木をする場合は、3月の中~下旬、または9月下旬頃に枝を取り、肥料分を含まない清潔な用土に挿して発根を待ちましょう。切り口に発根剤を塗ってもよいでしょう。
珍しい品種の場合は、接ぎ木をして増やしておくのも一つの方法です。
ナンテンの実が付かない時は

ナンテンを育てたら、やはり真っ赤な実を楽しみたいもの。ナンテンの実が付かないなと思ったら、次のような点を確認してみましょう。
日当たり
先述の通り、ナンテンは日当たりが悪いと実付きが悪くなることがあります。栽培している場所に光が十分に当たっているか確認してみましょう。
雨
ナンテンの花が咲く6~7月はちょうど梅雨どきで、雨が多い時期に当たります。雨が直接当たる場所に植えてあると、花粉が流されるために受粉しにくくなり、実付きが悪くなることがあります。軒下など、直接雨の当たらない場所で管理するか、どうしても実付きをよくしたい場合は、雨の日はビニール袋を掛けるなどして雨避けするとよいでしょう。
剪定時期
受粉した花を剪定してしまった場合、当然ながら実は付きません。ナンテンの花が咲く6~7月から実が付く冬にかけては剪定を避け、実を楽しんだ後の2~3月に剪定すると、せっかくの花を落としてしまうことを避けられます。また、一度実を付けたナンテンの枝は、その後3年は実を付けないといわれるので、剪定を兼ねて実のなった枝は収穫してしまうのもいいですね。新梢にも花を付けないので、切り戻しをする際は、すべての枝を切り戻してしまわないようにするとよいでしょう。ただし、強剪定して小さくする場合は、長い枝を残さないようにして、すべての枝を同じように切り詰めます。
受粉木
ナンテンは1株でも実を付けますが、近くに異なる品種のナンテンを植えると、より実付きがよくなります。1本だけ育てているけれど実が付かないという方は、もう1本違う種類のナンテンを近くに植えてみるのもいいですね。また、花粉を媒介する昆虫が十分に生息していないために、受粉が行われず実が付かないこともあります。その場合は、殺虫剤の使用をやめて虫を呼ぶようにするのも一案です。
生育状況
ナンテンの生育がよすぎると、かえって実付きが悪くなることがあります。生育は旺盛で花も咲くけれど実が付かないという人は、肥料を控えてみるとよいかもしれません。
縁起がよくて育てやすいナンテンは初心者にもおすすめ!

ナンテンは昔からある庭木で、食用にこそなりませんが、縁起がよい木といわれたり、魔除けになったりと、とても有益な植物とされてきました。また、咳止めや殺菌効果も持ち、のど飴などに利用されています。日本の気候風土にも合っているため育てやすく、ガーデニング初心者にもおすすめです。鉢植えでも栽培することができるので、一株育てていると、お正月の飾りにも使えて便利なので、ぜひ身近に育ててみてください。
参考:
「常磐薬品 南天のど飴」https://nodoame.jp/index.htm
「みんなの趣味の園芸」https://www.shuminoengei.jp
『園芸Q&A 庭木・花木・果樹 346のトラブル解決法』(妻鹿加年雄・重田利夫著、家の光協会刊)
スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。2026壁掛けカレンダー『ガーデンストーリー』 植物と暮らす12カ月の楽しみ 2026 Calendar (発行/KADOKAWA)好評発売中!
