
M&Aによる企業の売却話がまとまりつつあるタイミングで、これまで目立たなかった少数株主との対立が表面化し、買い手が撤退するケースは少なくありません。実情を見ていきます。※本記事は弁護士法人M&A総合法律事務所の代表弁護士、土屋勝裕氏の書き下ろしです。
少数株主との対立の表面化で、買主はM&Aから撤退も
中小企業M&Aでは、敵対的少数株主が存在する場合、M&Aの準備段階で突然、会社と少数株主との対立が噴き出し、問題が一挙に顕在化することがあります。少数株主の持株比率の大小とは無関係に、歴史的な確執、経営判断に対する不満、親族間の心理的摩擦などが複合し、M&Aが進められない事態が生じることがあります。
とくに、長年表面化してこなかった少数株主との対立が、M&Aという大きな資金移動の局面をきっかけに噴出し、買主が「この状態のままではM&Aのリスクが高い」と判断してM&Aから撤退する例は少なくありません。敵対的少数株主が存在すること自体が、M&Aの進行を阻害する大きな要因となります。
M&A後に「対立構造」を引き継ぐ買主のリスク
敵対的少数株主が残存したままM&Aを実行すると、買主は売主と敵対的少数株主の対立構造をそのまま引き継ぐことになります。会計帳簿閲覧謄写請求、株式買取請求、株主代表訴訟、経営方針への異議、配当政策や役員人事に対する介入など、買主の事業計画に影響を及ぼしかねない敵対的少数株主の行動が継続する可能性があります。
買主としてはM&Aに際して「全株式」の取得を希望するのが通常ですが、株式集約こそが最も紛争化しやすい過程であり、少数株主との株式買取交渉が決裂したことでM&A自体が中断や撤退となるケースも多く見られます。
