◆解決へ導いた中年女性の正体
「その女性、最初はただのお客さんかと思ったんですが、突然スッと前に出て、何か老人の耳元でささやいたんです。そしたら急に、さっきまでキレ気味だったおじいちゃんが、表情を和らげて、そのまま彼女と奥の方に歩いて行ったんですよ」落ち着いた雰囲気の優しそうな感じの女性が老人に声をかけたのは、騒動が始まってから約15分が経過したころでした。あれだけ店員の説明に耳を貸さなかった老人が、彼女の一言で素直に従った姿に、店内の誰もが驚いたといいます。
「店の奥に案内されたあと、老人は商品を手にしたまま椅子に腰掛けて、その女性と何か話していたんです。その間にレジは再開して、私たちもようやく注文できました」
実はその女性、隣の携帯ショップで働くシニア向けサポートを担当している方とのこと。佐々木さんが座ったテーブルの横で優しくレクチャーしているその女性の胸には携帯電話ショップの名札がついていたそうです。
「良く考えてみると、私も機種変するときにそのお店に行ったとき、その女性が受付をしてくれたことを思い出しました。とても親切な方でしたね」
◆トラブルの先に見えた“日常”と温かい配慮
「その後、気になってチラッと様子を見たら、あの怒っていたおじいちゃんが、その女性と並んでハンバーガーを食べていたんですよ。すごく穏やかな顔で…なんだかほっとしましたね」女性はレジでの支払いをいったん現金で肩代わりし、席についてからゆっくりとスマホでの決済方法を説明したようです。後日、佐々木さんが同じ店を訪れると、再びその老人が姿を見せていたとのこと。
「今度は、ちゃんとスマホで”ピッ”と支払ってて、すごく得意げな顔をしてました。あぁ、あのときの努力が実を結んだんだなって、ちょっと感動しました」
この一件は、単なるトラブルではなく、現代社会が抱える“デジタルと高齢者”の課題を象徴するような出来事でもありました。
「技術って、使えるか使えないかじゃなくて、つなげてくれる人がいるかどうかが大事なんですね。あの女性の行動がなかったら、もっと大きなトラブルになっていたかもしれません」
<TEXT/八木正規>
【八木正規】
愛犬と暮らすアラサー派遣社員兼業ライターです。趣味は絵を描くことと、愛犬と行く温泉旅行。将来の夢はペットホテル経営

