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NYで密かに広がる新支払形態「任意プライス」は世界へ拡大するのか

生活費が高騰したニューヨークでは、支払い時の新たなコンセプトが注目されています。基本的なコンセプトは(店側ではなく)客側が自身でプライスを決定できるというもので、アメリカでは「Pay what you can」「Pay what you wish」「You can pay what you can afford」「Suggested price」などと呼ばれています。アメリカの現状やこの支払い形態が今注目されている背景に迫ります。

「払える分だけ払う」が密かなトレンド

【画像出典元】「Andrii Yalanskyi/Shutterstock.com」

ニューヨークは近年、インフレや家賃高騰で生活費が非常に高い都市の一つとなっています。そんな中、米CBSニュースは11月上旬、この街の飲食業界で起こっている画期的な試みを紹介しました。

通常値決めをするのは店側であり、アメリカで客が自由に決められるのはチップ額です。
そんな中、一部の店で導入されている新形態は、客側がメニュー本体価格の料金を決める(選ぶ)ことができるというもの。これは「Pay what you can」(PWYC)モデルと呼ばれています。このような「自由選択価格」は「You can pay what you can afford」などいくつか別の言い方もあります。

番組ではマンハッタンのある非営利レストランで試験的に始まったPWYCモデルが紹介されていました。この店では3種類の料金が用意されていて、経済的余裕のない人向けのお試しとして「15ドル」(約2300円)、それより1レベルアップで食事をしながら店側へのサポートもできる「45ドル」(約7000円)、さらに上のグレードで募金的な意味合いも含む「125ドル」(約1万9000円)となっています。

当地ではラーメン一杯が20ドル以上することも珍しくないため、「最安値の15ドルはラーメンより安い」と言えば想像しやすいでしょうか。とにかく“破格”といえる料金で食事体験ができるのです。

食事代にいくつかの選択肢があると聞けば、高級レストランのコースメニューを思い出す人もいるでしょう。そのような従来のコースメニューの飲食代金の選択肢は内容(品数、量、品質など)によって異なります。一方、同店のPWYCモデルの価格設定は、飲食代だけ客の支払い能力に応じて「客が自ら決めることができる」というもので、提供される料理は基本的に同じです。経済的余裕のない人はより少ない食事代で利用でき、経済的余裕のある人は多めに支払うことで、ほかの客や店自体を寄付のような形でサポートできる仕組みになっています。

ニューヨーク市では近年、人口850万人のうち4人に1人が貧困状態にあると言われています(話は飛びますが、物価高の問題は11月の市長選の結果に繋がった大きな要素です)。一方日本とは比にならないような富裕層も多く住み、そして寄付文化も根付いていますから、PWYCモデルは理にかなった仕組みと言えるでしょう。

経済状況にかかわらず、誰もが高品質な食事ができる食の公平性(Food Equity)へのテストモデルとして、番組では「クールなコンセプトだ」と紹介されていました。

PWYCモデルはコロナ禍でインフレが進んで以降、より聞こえてくるようになりました。NBCニュースも以前、フードトラック(屋台)が新たなPWYCモデルを導入したと報じたことがあります。このフードトラックではPWYCモデル導入後、客が支払う額は従来の料金より40%低くなったそうですが、店主は物価高による生活苦の人々を助けたいと話し、満足げな様子でした。

雑誌のタイムアウトでも、食の廃棄問題に取り組む非営利組織経営のカフェが、より多くの人に栄養価の高い食事を届ける目的で「$5 suggested donation*」(5ドル寄付を推奨)という料金形態を始めたことが報じられました。

(*寄付的な考えに基づいていて、推奨されている金額は5ドルだが、金銭的余裕がない人はそれより低くても良いし、余裕のある人はそれより高くても良いということです)

PWYCモデルは床屋などでも導入されています。ある美容師はNBCニュースで、PWYCの導入で来店する客層が広がり、笑顔に救われると満足そうに話していました。

文化施設でも広がる動き

【画像出典元】「Karolis Kavolelis/Shutterstock.com」

同じようなコンセプトと言えば「Suggested price」(推奨・提案価格)や「Suggested admission」(推奨入場料)もそうです。近年、市内の美術館や博物館でも耳慣れたワードになっています。

例えばアメリカ自然史博物館の入場料は一般25ドル(約3900円)ですが、州民であれば、入場料を自分で決めることができる「Pay what you wish」制度を導入しています。

世界三大美術館の一つとされるメトロポリタン美術館も、入場料は一般30ドル(約4700円)ですが、州民と近隣州の学生に向けて「Pay what you wish」制度を設けています。

このような動きはニューヨークだけのものかと調べたところ、筆者が確認できたものだとソルトレイクシティのユタ現代美術館(UMOCA)でも現時点で「10ドル推奨・提案価格」が設けられています。

そのほかにも入場料に「地元住民の日」を設けているところ(過去も含む)「常時無料」「特定の曜日や時間帯のみ無料」など形態はさまざまです。

配信元: mymo

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