住まい支援の価値を、確かな根拠として提示する
――母子ハウスにまつわる、現状の課題があれば教えてください。
秋山:母子ハウスの運営には、暮らしに寄り添う人的支援が欠かせません。精神的につらいときはそれに適した施設につないだり、行政手続きに同行したりするといったサポートは日常的に必要ですが、現状は無償で担われています。本来は福祉的な役割であり、人件費に対する公的な手当てが必要だと思います。
住宅に関するセーフティネットを提供するため、住宅保証や家賃補助を行う「住宅セーフティネット法」という制度はあるものの、全国約1,700自治体の中で、活用されているのはわずか40程度しかありません。自治体が課題や制度を認識し、予算化しない限り使えない仕組みとなっているのが現状です。
自治体からすると「費用対効果が見えにくい」というのが、制度が使われない理由の1つでしょう。一方でSWIPでのデータを見ると、収入の増加や正社員登用など、自立につながる効果が確実に出ていて、長期的には社会保険料や税収の増加によって、2年以内にコストが回収できる見込みも示されています。住まい支援は「見えづらいが確実に効果のある社会投資」だと知ってもらうことが今の課題です。
――課題を解決するためには、どのような取り組みが必要でしょうか?
秋山:まずはこの課題で起きている社会的影響力を可視化することです。「豊島区モデル」はデータ収集も目的の1つで、居住者の自立や生活安定、経済的な運営リスクなどを数値化して収集しているところです。SWIPは2026年の2月で事業が終了するため、年度内に報告書をまとめ、その後は政府や自治体への提言を本格的に行っていきます。
自治体や議員の方々に響くのは、数字に加え「人の変化」が伝わるストーリーです。例えば、「収入が上がった」という数字だけでなく、「その結果、子どもの習い事を続けられるようになった」「子どもが胸を張って友だちと遊べるようになった」など、生活の変化が見えると政策として取り組む意義がより伝わると思います。
今後は、こうした具体的な変化を丁寧に集め、確かな根拠として行政に示していきたいと考えています。

安心して暮らせるひとり親世帯を増やすために、私たち一人一人ができること
最後に、秋山さんに安心して暮らせるひとり親世帯を増やすために、私たち一人一人ができることを伺いました。