
法人や個人事業主、富裕層はもちろんのこと、相続が発生したり住宅を購入したりすると、税務調査は一般宅にもやってきます。その際、なんの対策もせずに調査を受けると、調査官の狙いにハマってしまい「多額の追徴税」を課されてしまうかもしれません。そこで今回、税理士法人グランサーズ共同代表で公認会計士・税理士の黒瀧泰介氏が、2026年の税務調査の傾向と「重点的に狙われている分野」を解説します。
国税庁が公表する「税務調査のターゲット」
毎年行われている税務調査。経営者のなかには、「今年こそはうちに来るのではないか」と不安を感じている人も多いのではないでしょうか。
実は、国税庁は毎年、重点的に税務調査を行う対象や業種を公表しており、その背後には明確な意図が隠されています。
そこで今回は、2025年の最新資料をもとに、税務調査で狙われやすいターゲットとその背景、そして対策をみていきましょう。
納税者をけん制して不正を予防…国税庁が、あえて調査対象を公表するワケ
国税庁が公表している資料とは「調査等の状況に関するレポート」です。国税庁がこうした資料を公開する背景には、国税庁の“内部事情”があります。
まず、個人や法人の確定申告件数は膨大です。個人の確定申告だけで年間約2,300万件、法人は約300万件にのぼります。
一方、国税庁の職員数は5万5,000人ほどです。しかもそのうち、実地調査に携わるのはさらに半数程度となっています。
職員1人が抱えられる申告件数には限りがあり、すべての申告を詳細にチェックすることは物理的に不可能でしょう。
そのため、国税庁は限られたリソースを効率的に使うべく、申告漏れや脱税が疑われる業種・対象に調査を集中させています。
公表資料は「私たちはこれだけ正確に仕事していますよ」という実績のアピールと同時に、「この分野を重点的に調査しています」と宣言することで、納税者にプレッシャーを与え、不正を未然に防ぐ「けん制」の役割を果たしているのです。
ターゲットにされている人・取引5選
最新の公表資料から読み取れる「調査対象になりやすいターゲット」として、以下の5つが挙げられます。
1.富裕層
保有資産や所得が多い人ほど、申告漏れがあった場合の追徴課税額が大きくなります。国税庁にとっては効率的に税収を確保できるため、富裕層は継続的にマークされています。
なお、明確な定義はありませんが、一般的には金融資産1億円以上を富裕層、5億円以上を超富裕層と呼ぶことが多いです。経営者のなかにも該当する人は少なくないでしょう。
2.海外投資・海外取引
近年、海外不動産や株式投資を行う人が増えていますが、先述した公表資料によると、海外投資を行った個人に対する追徴課税額は1件あたり約649万円と、全体平均(約275万円)の2.4倍にのぼります。
「海外の資産はバレないだろう」と考えるのは危険です。海外口座の情報も、国税からは丸見えだと思ったほうがいいでしょう。
銀行の海外送金情報は「国外送金調書」により税務署に報告されるほか、5,000万円以上の海外資産は「国外財産調書」で納税者側の自己申告が義務づけられています。
さらに、CRS(共通報告基準)制度により、国際的な税務についても各国が口座情報を共有しているため、「海外での資産隠し」はもはや困難です。
3.インターネット取引
ネット通販やアフィリエイト、クラウドソーシング、ギグワーク(Uber Eatsや出前館の配達員など)、シェアリングエコノミー(民泊やカーシェアなど)に関わる人も、ここ数年税務調査のターゲットとして注目されている分野です。
特に副業や新しいビジネスモデルで収入を得ている層は、申告意識が低く、無申告になるケースが多いと国税庁は見ています。また、新たな分野だからといって見逃しているわけではない、というアピールも込められています。
4.無申告者
本来確定申告が必要にもかかわらず申告していない人は、当然ながら調査対象です。公表資料でも「追徴税額過去最高」とあり、税務署の目は年々厳しくなっています。
特に、副業をしている方は要注意です。年間20万円を超える所得がある場合(給与所得者)は申告義務が生じます。「少し儲かっただけだからバレないだろう」と放置すると、後々大きなリスクになります。
5.消費税の還付申告を行っている事業者
輸出業や多額の設備投資を行った事業者は、消費税の還付を受けられることがあります。
しかし、この制度を悪用し、架空の仕入れを計上して不正に還付を受けようとするケースが後を絶ちません。国税庁は消費税の不正還付対策に本腰を入れており、悪質な場合は重加算税を含む厳しい処分が下されます。
このほか、資料では言及が少ないものの、暗号資産や仮想通貨取引も申告漏れが多い分野として注目されています。今後、調査が本格化する可能性が高いでしょう。
