期待の“先走り”感も…投資家に求められる「慎重な楽観」
生成AIは、知的労働の生産性を段階的に底上げし、マクロでは成長率や利益率を押し上げ得る「本物の技術」だと考えられます。標準業務の自動化、開発・設計・分析のサイクル短縮、少人数での高付加価値化―いずれも経済状況の改善につながる方向です。
一方、市場でいま評価されているのは主に半導体・データセンターといった“土台(インフラ層)”であり、サービスや業務インフラへの本格的な波及はこれからでしょう。多くの分野で収益モデルや単価設定が未確定のまま期待が先行している側面も否めません。
歴史を振り返れば、ITや鉄道、電気通信の普及でも「期待が先行→調整→本格普及」という過程を辿りました。これから紹介するハイプサイクル(期待→幻滅→安定・普及)が示す通り、普及は調整と表裏一体です。
ゆえに投資姿勢は「慎重な楽観」が妥当でしょう。生成AIの潜在力は大きい――ただし時間軸と層の違い(いまはインフラ中心、サービス波及はこれから)を見極め、期待先行の局面では過度な一極集中を避ける。
基本方針どおり、「中心に据える」ことと「依存する」ことは別であり、テーマに魅力があっても分散とリバランスで偏りを抑える発想が重要です。
期待には幻滅もつきもの…新技術普及までの「5段階」
新技術投資で役立つ概念のひとつが、米ガートナー社が毎年公表する「ハイプ・サイクル」です。これは、新技術が登場してから社会に普及するまでの典型的な道筋を、曲線で表したものです。ハイプ・サイクルは大きく5つの段階に分かれます。
(1)技術の黎明期:登場直後。話題になるが商業化は未定
(2)過度な期待のピーク:メディアや市場で過熱。投資資金が殺到
(3)幻滅期:実用化が進まず失望感が広がり、価格が調整
(4)啓蒙期:一部の実用事例が出始め、可能性が再評価
(5)安定期・普及期:社会に定着し、安定成長する段階
グラフにすると、最初に急上昇(期待)、次に急落(幻滅)、その後なだらかに上昇(普及)という山→谷→上り坂の曲線になります。
投資家が最も失敗しやすいのは 「期待のピーク」で飛びつくことです。話題性はあっても収益化が伴わず、その後の幻滅期で大きな損失を被る危険があります。
逆に注目すべきは 「幻滅期」です。市場の関心が薄れた時こそ、将来性を冷静に見極め、長期的な成長に備えて投資を仕込む好機となります。その際に評価すべきポイントは、
〇実装可能性(本当に使える段階か)
〇収益化までの時間軸(ビジネス化は何年先か)
〇規制や標準化の見通し(制度的障害はあるか)
これらを踏まえ、「いつ・どの段階で、どの程度の比率でポートフォリオに組み込むか」を設計することが重要です。
