◆もし野中さんが生きていたら、何を思うか
――現代の政治を見て、もし野中さんが生きていたら、自民党や今の政治にどのような発言をされると思われますか?山田大智:「心を持って政治をやってほしい」ということと、今の政治には「遊びがない」「幅がない」という点を指摘すると思います。右か左かときっちり決めてしまい、間を取ることや、妥協点を見つけることが少なくなっています。
野中先生やそれ以前の政治家は、懐が深かったと思います。今の政治に対しては、「もっと丁寧にやりなさいよ」と言われるでしょう。国民の生活、生命財産を守ることなんだから、もっと丁寧な議論が必要だと。
◆最後に会った時の言葉は……
――有権者は政治家とどう向き合うべきでしょうか?山田大智:政治家は有権者の代弁者なのですから、「有権者はもっと議員に色々と意見を言った方がいい」 と思います。SNSなどで一方通行の発信をするのではなく、直接会って話し合いをされる方が良い。いきなり議員に会うのはハードルが高いと思うなら、地元に秘書を置いていますので、秘書に話を伝えてもらうべきです。有権者の要望を吸い上げ議会で代弁するのが選ばれた議員の役目で、それが民主主義のあるべき姿だと思います。
――野中さんからかけられた最後の、あるいは心に残る言葉はありますか?
山田大智:ある議員の秘書をしていた時期に、私が職を辞し、次の秘書に決まったことを報告に行った時のことです。その時、先生は私に「政治は生き物だから頑張れ」と言われました。これは「どのような流れになるか分からないから気を抜かぬよう頑張るように」という意味だと認識しています。
亡くなる4ヶ月前、最後に会った時の言葉は「君いくつになった?」。私が「54です」と答えると、「あ、そうか」とそれだけでした。
しかし、亡くなって四十九日を過ぎてからご自宅に伺った時、お嬢様から「お父さんが倒れる前、テーブルにずっと『山田君の履歴書』を置いてたよ」という話を聞いて「ああ、救われたな」と。なぜなら先生の性格上、見たくないものならすぐに片付けるはず。引退後も様々な仕事をしてきた私の履歴書をずっと目にしてくれていたんです。「自分はあまり嫌われていなかったかもしれない」 と最後に思えました。
<取材・文/菅原春二>
【菅原春二】
東京都出身。フリーライター。6歳の頃から名刺交換をする環境に育ち、人と対話を通して世界を知る喜びを学んだ。人の歩んできた人生を通して、その人を形づくる背景や思想を探ることをライフワークとしている。

