いつまでも輝く女性に ranune
「惨めでたまりません」ランチは1回5,000円・おやつは桐箱入りメロンだった、60歳セレブ専業主婦の〈生活費月30万円〉が突然ストップ。いまやスーパーの半額シールを待ち続ける〈極貧の食卓〉【FPが解説】

「惨めでたまりません」ランチは1回5,000円・おやつは桐箱入りメロンだった、60歳セレブ専業主婦の〈生活費月30万円〉が突然ストップ。いまやスーパーの半額シールを待ち続ける〈極貧の食卓〉【FPが解説】

半額シールの前で立ち尽くした妻

数日後、夫婦で初めて家計について話し合いました。夫は月10万円の生活費を再開することに同意しましたが、「これ以上は出せない」と釘を刺しました。美佐子さんは、それまでの3分の1の金額で生活を回さなければならない現実に直面したのです。

再開されたのは“妻が自由に使える生活費10万円だけ”で、固定費や貯蓄の管理は依然として夫の手に残されたままでした。

翌日、美佐子さんは、昼過ぎに近所のスーパーへ向かいました。しかし、店に入った瞬間、これまでとはまるで景色が違ってみえたそうです。値札の数字が以前より大きく感じる。惣菜を手に取り、そっと戻しました。

「半額シールが貼られる夕方まで待とうか……。惨めでたまらない。私、本当にこれからこんなことをするんだろうか」

デパ地下で好きなものを好きなだけ選んでいたころには想像もしなかった光景。値下がりするのを待ちながら、惣菜棚の前に立ち尽くす姿は、昨日までの“セレブ妻”の面影を完全に消し去っていました。

家に帰っても、現実は続きます。今夜の夕食は、198円の半額惣菜と、賞味期限が迫ってお買い得品になった鶏むね肉のこま切れに、安売りの豆腐だけ。夕食を終え、洗面所に立ったとき――鏡に映った自分の顔が、誰なのかわからなくなるほど老け込んでみえたといいます。ようやく美佐子さんは気づきました。自分が守っていたと思っていた生活は、実は、夫の稼ぎの上にかろうじて“置かせてもらっていた夢”だったことを。

35年ぶりに社会に出て気づいた「夫の重圧」

美佐子さんは週3日、1日5時間のパートに出ることを決意します。35年ぶりに社会に出た当初は、想像以上にヘトヘトでした。「たった週3日、1日5時間でもこんなに疲れるなんて……」。帰宅してソファに倒れ込みながら、美佐子さんは夫の姿を思い浮かべました。

夫は35年間、毎日満員電車に揺られ、会社で神経をすり減らし、それでも家族のために働き続けてきた。その重圧を、自分は一度も想像したことがなかった――。

月7万円ほどの収入を得始めたころ、美佐子さんはそこから月2万円ずつ自分名義の口座に貯金をはじめました。同時に、夫は意外な本音を漏らしました。「美佐子が動いてくれて、本当にほっとした」

妻が働きはじめたことで、夫婦の関係は少しずつ変わっていきました。一方的な依存ではなく、互いに支え合う“対等さ”が生まれはじめたのです。

半年が過ぎたころ、美佐子さんは職場にも慣れ、「もう少し働く日数を増やそうかな」と自分の“働ける力”がこれからの老後を支えると実感していました。働くことで得られたのは、収入だけではありません。社会とのつながり、そしてなにより、夫への感謝と尊敬の念でした。

「あのとき生活費が止まらなかったら、私たちは離婚していたかもしれません」と美佐子さんは振り返ります。大切なのは今日からの行動です。自分名義のお金を持つこと、家計の数字を知ること、少しでも収入源を持つこと。その3つが揃えば、60歳からでも人生は立て直せるのです。

三原 由紀

合同会社エミタメ

代表

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