◆一晩で都内のマンションが溶けることも

「5000万円近く負けた富裕層に東京のマンションで払うと言われ、そのままいただいちゃったこともあるね(笑)」(C氏)
こうした荒唐無稽な裏ツアーがなぜ成立したのだろうか。背景には、習近平政権が’12年に導入した「中央八項規定」による贅沢禁止と腐敗摘発がある。
中国本土で要人の遊び場が一掃され、欲望の逃げ場として日本が選ばれたのだ。そして「お遊びしたいなら、日本へ来ればよい」というキャンペーンが水面下で展開されたのだった。
しかしそんな景気の良さも今や激変。すっかりヒマになってしまったという。
◆「インチキ日本料理」で一旗揚げたが…
首都圏を中心に5店舗の和風居酒屋チェーンを展開するD氏(50代・上海出身)も、利益半減に直面している。「コロナ禍で倒産寸前だったが、インバウンドが戻ると中国系団体客のおかげで急激に売り上げが伸びた。でもそれが最近、突然消えてしまった」
1994年に来日し、永住権も持つD氏は、昼の時間帯に在日中国人系の旅行会社と組んで、毎日20〜40人の中国人団体客に「インチキ日本料理」を提供して一人5000〜1万円を取っていた。
「超安い原価で作った天ぷらやたこ焼き」で高利益を上げ、東京都豊島区にローンで9000万円の中古マンションを購入し、車もプリウスからベンツに乗り換えたが、昨今の情勢によりピンチに。
昼間の売り上げ一日平均15万〜30万円が消失したためマンション月35万円、ベンツ月10万円のローンの支払いができなくなる見込みだ。
「このままだと、すべて手放すしかない。勘弁してほしいよ……」(D氏)
思わぬ形で「浄化」されつつある中国人闇ビジネス。しかし、水はせき止めても行き場を変えて流れ出す。新たな闇ビジネスを生み出すことになりかねず、注意深く見ていく必要があるだろう。
取材・文/根本直樹

