◆社用車での軽率な行動
鈴木翔太さん(仮名・20代)は、友人Aとその彼女と3人でドライブをする約束をしていた。
「これ、社用車じゃない?」
Aは当時、鈴木さんの会社に転職してきたばかりで試用期間中だった。会社から一定期間だけ“社用車を借りて”通勤しているが、休日に私用で使うことは禁止されていた。
「バレなきゃ平気だって」
本来なら使用不可の車を堂々と運転しようとするAに驚きつつも、鈴木さんは渋々と後部座席に乗った。高速道路に入ると、Aは彼女の前で恰好をつけようとしたのか急にスピードを上げた。
「ちょっと、スピード出しすぎじゃない?」
鈴木さんが声をかけると、彼女は笑顔で「かっこいい!」といったという。その言葉に気をよくしたのか、Aはさらに加速。隣の車線の車に幅寄せしたり、蛇行運転したり……。
「危ないからやめたほうがいいって!」と注意を促す鈴木さんに対して……。
「運転してやってるんだから口出すなよ」
まったく聞き入れられず、鈴木さんはただ不安を募らせた。幸い、あおられていた車が高速を降り、事故には至らなかったそうだ。
◆取引先社長からの苦情で大問題に…
数日後、鈴木さんは会社で耳を疑う話を聞いたという。
「Aさん、試用期間が3か月から6カ月に延びたらしいよ」
どうやら、Aがあおっていた相手は“取引先相手の社長”だったのだ。
証拠となる映像の車体に書かれた会社名をみた社長は激怒し、すぐに会社へ連絡してきたという。Aは、社用車の無断使用、あおり運転の加害者、そして取引先の社長を怒らせたことの“三重の過ち”で厳しい処分を受けた。
「軽率な行動が、ここまで大きな代償を生むとは思いませんでした」
鈴木さんはその一件を振り返り、今も肝が冷える思いがするそうだ。
<取材・文/chimi86>
【chimi86】
2016年よりライター活動を開始。出版社にて書籍コーディネーターなども経験。趣味は読書、ミュージカル、舞台鑑賞、スポーツ観戦、カフェ。

