宗教2世は真の自由を掴めるか――『暁星』湊かなえ・著

宗教2世の青年が、宗教と関係があると噂される政治家を殺害してしまう――。そんな衝撃的な出だしから、物語は始まります。
母の入信によって家の財産も人間関係も奪われた青年。
同じように、幼い頃から否応なく宗教にとりこまれてきた女性。
親に連れられた集まりで知り合った二人は、互いの傷を打ち明け合い、惹かれ合っていきます。
抜けられない宗教に怯え、心をひそめ生きていかなければならない日々。
絶対に抜けられない仕組み。
誰も助けようがない世界に入ってしまった二人のもがきと苦しみ、悲しみが伝わってくるような作品でした。
この連鎖を終わらせるにはどうしたらいい?
ラストは、ミステリーの女王・湊かなえさんらしい大どんでん返し。真相を知ったとき、「こういうことだったのか」と、冒頭に戻って伏線を回収しながら読み直したくなりました。
社会問題、恋愛、ミステリーが見事に絡み合った、読み応えのある一冊。静かな年末年始、心をわしづかみにされるような読書をしたい方におすすめです。
『暁星」(双葉社)>>
選書してくれたのは、まいこさん

4人の子を育てる専業主婦から、実母の介護と看取りを経て、資格取得など迷走しながら50代からSNSに挑戦。Instagram(@maiko_books)で「50代読書主婦の惚れる言葉に出会える本紹介&選書」をテーマに、がんばる女性を応援する本や書店の売れ本情報を紹介している。
どうやって今の活躍の場を得られたのか、インタビューは「わたしリスタート特集」で読めます!
>>まいこさんのインタビュー記事を読む

