◆自ら率先して報道の信頼性を弱めている
根本:SNSの反応を気にする余り、最近は人物や街頭の映像にぼかしが入ることも増えています。情報の信ぴょう性という観点から、欧米のメディアの場合、日本のメディアよりも実名報道へのこだわりが強い。たとえ街頭インタビューでも、取材時に名前を明らかにしなかった人のものは使わないという考え方が主流です。自ら率先して報道の信頼性を弱める方が、コンプライアンス的にはよっぽど問題だと思いますね。林:要は、メディアの側がデリケートになりすぎているんですよね。
根本:だから「コンプライアンス」を言い過ぎるのは、本来良くない。間違いは起きてもいい、いざとなれば、「上が責任を取るよ」というくらいのスタンスでないとダメなんです。
沼田:同じことは、SNS対策にも当てはまる。例えばネット上で炎上した動画を見ると、「見せ場」が切り取られて拡散していることが多い。炎上させる側が、インプレッションを稼いで収益を上げる狙いでやっているだけの場合もある。なので炎上=悪いではなく、「SNSの声に惑わされないで」と現場に伝えています。そうやって責任の所在を移すことで、現場の安心感が高まっているのも感じますね。
根本:それは立派ですね。うちはむしろ、「これやめろ」のオンパレードです(笑)。SNSを過剰に気にしすぎるあまり、メディアがダメになっている部分はやっぱりあると思います。
◆会社には「すべての批判を鵜吞みにせず、強硬に立ち向かってほしい」

林:働き方改革の影響で、今は制作現場でも、ディレクターよりADの方を早く帰していたりもする。そうやって時間の線引きをすることで、クリエイティブの核が失われてしまっている部分も大きい。さらにそこにコンプラの確認作業も加わり、「面倒だからやめよう」とさじを投げる状態になってしまっています。例えAIを使ってでも現場の負担を減らせれば、チャレンジの裾野はさらに広がると思います。
根本:テレビが面白かった時代は、ドラマにしてもバラエティにしても、失敗を恐れず新しいものを作ろうという風潮がありました。今、その空気がしぼんで来ているのは確かだと思います。ただ今日お話をして、例えばSNS一つを取っても、下の世代は上の世代ほど過剰な恐れがないと感じました。今後世代が変わって、盛り返しが起こるのに期待しています。
沼田:YouTubeも含め映像媒体が色々出てきている中でテレビ局を受けたのは、何だかんだ言って、今なお影響力が一番大きいのは地上波だから。テレビが公共の電波を使って届ける意義が軽視されて欲しくはない。すべての批判を鵜呑みにせず、本当にダメなものとそうでないものを分けた上で、後者に会社が強く立ち向かう姿勢を保てるかどうか。これに尽きると思います。
<取材・文/松岡瑛理>
【松岡瑛理】
一橋大学大学院社会学研究科修了後、『サンデー毎日』『週刊朝日』などの記者を経て、24年6月より『SPA!』編集部で編集・ライター。 Xアカウント: @osomatu_san

