冬型塊根の育て方|水やり・日照・温湿度管理のポイント
日照(成長期の管理)


【LEDライト使用時の注意点】
風(成長期の管理)

植物が健康に成長するためには、風による適度な空気循環が欠かせません。
自然界では常に風が吹いているため問題ありませんが、室内管理の場合は、サーキュレーターを使って同じ環境を人工的に作ってあげる必要があります。
サーキュレーターは株に直接風を当てるのではなく、室内全体の空気をゆるやかに循環させる目的で運用します。

空気が停滞すると、蒸れやカビ、病害のリスクが高まるため、軽く空気が動いている状態を作るだけでも十分に効果があります。
【エアコンじゃあダメなの?】
温湿度管理(成長期の管理)

【温度管理】
冬型塊根は夜間に気孔を開いてCO₂を取り込み、日中に光合成へ利用する CAM型光合成を行う植物です。
この代謝が正常に働くには、
光量・
温度・
湿度の3要素が揃うことが必須です。
特に
温度は代謝の鍵を握っており、
・10℃を大きく下回る環境が長時間続く
・急激な冷え込みが繰り返される
といった状況では、夜間の代謝がうまく作動せず、体内でのエネルギー処理が滞ります。
それにより、根の吸収力低下や葉のダメージ、成長の停滞などが起きやすくなります。
そのため冬型塊根植物は、基本的に5℃以下の環境に長く晒さないことが重要です。
冬でも晴れた日は日中の気温が18℃くらいまで上がることがあるので、そんな時は迷わず屋外に出して、直射日光 × 十分な温度 × 自然の空気という、“冬型が最も喜ぶ条件” を与えてあげましょう。
【湿度管理】
代謝のリズムを支えるため、適切な湿度も大切です。
湿度が高すぎると根への酸素供給が妨げられ、逆に乾燥しすぎると夜間に気孔を開くCAM植物特有の活動に負荷がかかります。
室内管理では、湿度40〜50%程度を目安に、乾きすぎず蒸れすぎない環境を意識すると、日中・夜間の代謝が安定しやすく、株もストレスを受けにくくなります。
水やり(成長期の管理)

成長期である秋(10月下旬)〜翌春(4月上旬)までは、用土表面が乾いたタイミングで、鉢底穴から勢いよく水が流れ出るまでしっかりと与えます。
この“勢いよく流れる”ことがとても重要で、底穴から水が抜ける際に根の代謝で生じた有機酸などの老廃物を洗い流す「リーチング効果」が期待でき、鉢内環境を清潔に保ち、根腐れの防止にもつながります。
用土の乾き具合は、慣れれば目視や触った感覚で判断できるようになりますが、初心者の方は鉢の縁に竹串を挿し、30秒ほど置いてから抜いたときの土の付着具合で状態を判断すると失敗しにくいでしょう。
湿った土がしっかり付いていれば水やりはまだ不要で、乾いた土がうっすら付く程度であれば水を与えるタイミングです。

4月中旬を過ぎた頃からは株の様子をこまめに観察し、落葉が目立ち始めたら徐々に水やりの間隔を空けて、夏季休眠へと誘導します。
ただし、休眠に入るタイミングは環境や個体によって差があります。
さらに近年は異常気象の影響もあるため、季節の変わり目は気温と株の状態をしっかり観察しながら水やりの量と頻度を調整することが大切です。
施肥(成長期の管理)

冬型塊根には、を薄めて使う方法がおすすめです。
微粉タイプは液体タイプと比べてカリ(K)の含有量が非常に高く、株をしっかり締めながら健康的に育てるのに向いています。
カリは細胞を強くし、幹や塊根が締まって太りやすくなるほか、徒長を抑え、根のストレス耐性を高める働きがあります。
そのため、形を崩さずに育てたい冬型塊根との相性は抜群です。
微粉はわずかな量で十分に効くため、溶かす量は、市販の500mlペットボトルに対して、ハイポネックス微粉を0.2g(約0.2ml)ほど。
これで塊根系にとって安全な2500倍の希釈濃度になります。
これは0.1ccの計量スプーンだとすり切り2杯。写真にある商品に付属の緑色の計量スプーンを使用する場合は、小さい1g計量のほうで、かさ高3mmくらいです。
これを成長期に月1〜2回ほどあげるとよいでしょう。
休眠期(夏)の管理(断水のコツ)
休眠期である7〜9月は基本的に断水で管理しますが、完全断水すると細根が枯れ、秋の立ち上がりが遅れて冬にずれ込む場合があります。
さらに、根が乾燥しすぎることで根ジラミが発生し、最悪は枯死に至ることもあります。
これを避けるために、休眠中も月に1回は用土表面が軽く湿る程度の水を与えておくと安心です。

の大きさによって調整するとよい。塊根にはできるだけかからないように。
休眠中の管理場所は、直射日光を避けた室内の涼しい環境が基本。
暑さで株が傷むリスクが高いため、真夏はLEDのみで十分です。
ちなみに最もストレスが少ない環境は以下のとおりです。
- 室温:22〜28℃
- 湿度:40〜60%
- 弱い空気循環(サーキュレーターで室内の空気が緩やかに動く程度)
冬型塊根にとって近年の日本の夏は原産地よりも過酷といわれます。
真夏の直射日光下では、組織のタンパク質変性が起こり、根が完全に活動をストップし、一気に枯死する危険さえあります。
このため、株の防御力の弱まる休眠中は、屋内で丁寧に“眠っている我が子”を見守るように管理するのがベストですこうして夏を無事乗り切ったら、10月に入った頃に徐々に芽吹きはじめるので、緩やかなペースで灌水量を増やしていきます。

“かりんとう”みたいな物体から、産毛をまとったミントグリーンの可愛らしい葉が次々に展開されていく様子には心底感動させられる
。よくあるトラブルと対処法
葉が急に落ちる(落葉)
冬型塊根は休眠前後に自然と葉を落としますが、秋〜冬のオンシーズン中に、温度低下(特に10℃以下)や光量不足、過湿が原因で落葉する場合もあります。
初春〜初夏の時期で、ほかに異常がなく落葉した場合は休眠と判断して問題ありませんが、それ以外で落葉が著しい場合は、用土が濡れているならしっかり乾かし、気温は15〜20℃を保つようにします。
秋〜冬はLED補光で光量を確保し、夜間の冷え込みに注意しながら水やりの頻度も控えめにしましょう。
塊根(幹)がシワシワになる
休眠中の水分不足や、断水しすぎによって細根が枯れると、塊根が“シワ寄り”することがあります。
前述したように、休眠期でも完全断水は避け、月1回は表面が湿る程度で軽く水を与えると回復しやすくなります。
夏は高温で細根が傷むこともあるため、真夏は涼しい室内(23〜28℃)で管理し、乾燥のしすぎも避けるようにしましょう。
塊根(幹)が黒く変色する/柔らかくなる
過湿や低温下での水分滞留が原因で根腐れが起きると、塊根が黒くなったり柔らかくなる症状が出ます。
また、真夏の高温によるタンパク質変性や病原菌がこの原因になることもあります。
軽度なら黒い部分を削って、『STダコニール1000』など殺菌剤を用いて殺菌し、根腐れが疑わしい場合は抜き上げて傷んだ根を除去し、乾燥させてから植え直します。
冬の“濡れた用土&10℃以下”や、夏の“直射日光”はガチで避けましょう。
夏にぐったりする(夏バテ・高温障害)
冬型塊根は高温に極端に弱く、真夏の直射日光下では鉢内温度が40〜50℃に達して瞬時にダメージを受けることがあります。
ぐったりとしているようであれば、すぐに涼しい場所(23〜28℃)に移し、用土が濡れていれば完全に乾かします。
葉が焼けても塊根さえ硬ければ、復活する可能性は十分にあります。6〜10月は基本的に直射日光を避け、LEDライトのみで管理し、前述のように月1回の軽い水やりで細根を維持するとよいでしょう。
