
一年でいちばん昼が短い日、冬至(とうじ)。2025年は12月22日(月)です。冬至は、光が最も弱くなる日であると同時に、ここから少しずつ日が長くなっていく“折り返し点”。昔から人はこの節目を、自然の流れが切り替わる大切な日として意識してきました。ガーデニングにおいて冬至は、「花を咲かせる日」ではなく、「根を充実させる日」。一見、花も葉も動きを止め、庭は静まり返ったように見えますが、目に見えない土の中では、次の季節に向けた準備を静かに進行しています。だからこそ、春に差がつく庭仕事は、まさにこの時期にこそ仕込まれます。冬至を目安にしておきたい大事なガーデニングをまとめました。
見えない成長が始まる、冬至前後の植物の状態

冬になると、多くの植物は地上部の成長を止めます。葉が増えない、花が咲かない。するとつい「今植物は休んでいる」と思いがちですが、実際には違います。地上の動きが鈍るぶん、植物のエネルギーは土の中、つまり根の充実に向けられています。
特に宿根草や低木、春咲き球根、クリスマスローズのような植物は、冬の間も根を活動させています。冬の間、宿根草の根は大きく伸びるわけではありませんが、呼吸し、養分を巡らせ、細胞を修復する生命活動は続いています。新しい根を伸ばすには、
- 細胞が健全である
- 根端分裂組織が生きている
- 養分とエネルギーが滞りなく供給される
という前提条件が必要です。
冬の生命活動(呼吸・養分移動・細胞修復)は、この「伸びる前提」を整える時間です。
冬至前後にやっておきたい「土と根」の庭仕事
元肥・寒肥は“効かせる”より“整える”意識で

冬に行う作業の一つとして「寒肥(かんごえ)」がありますが、これは前述したように「冬に根を伸ばすため」ではなく、春に根と芽が一気に動ける状態をつくるための“前提条件づくり”に必要な作業。
具体的には、
呼吸を滞らせない
養分移動をスムーズにする
細胞修復・更新を支える
貯蔵養分を確保する
これらを冬の間に維持・準備するために大事なのが寒肥。
「今は育たないのに、肥料をあげる意味があるの?」と思うかもしれませんが、土に栄養の“貯金”をしておくことで、根は安心して広がります。
では、寒肥が効いたら何が起きる?(バラの場合)
春に起きる違い
| 冬の寒肥管理 | 春のバラ |
| 適切 | 根の伸長が早い/芽吹きが揃う/枝が太い |
| 不足 | 芽吹きが遅れる/細枝が多い |
| 過多 | 根傷み/初期生育の乱れ |

寒肥に向く肥料の【必須条件】
① 即効性がない(ゆっくり効く)
- 冬は植物の吸収能力が低い
- すぐ溶ける肥料は
→ 吸われない
→ 根を傷めるリスク
緩効性・遅効性が絶対条件です。
② 土壌環境を壊さない(むしろ整える)
冬の根にとって最大の敵は
- 低温
- 過湿
- 低酸素
肥料自体が土を固くすることなく、通気性・微生物相を悪化させないことが重要。
③ 「栄養を与える」より「環境を支える」
冬は成長させる伸ばす時期ではありません。
- 根が生き続けられる
- 春に動ける状態を保つ
これを優先しましょう。
「寒肥向き肥料」をタイプ別に整理
① 有機質緩効性肥料(王道)

- 油かす系
- 発酵済み有機肥料
- 骨粉・魚粉少量配合
春に効く
土を壊しにくい
バラ・落葉低木向き
② 微生物系・バイオスティミュラント系

- 微生物・代謝促進
- 根の生理状態を整える
- 肥料というより「環境調整」
冬の植物の生育状況と最も相性がいい
施肥量を抑えたい人向け
③ 緩効性化成肥料(控えめに)
- IB肥料
- 被覆肥料
扱いやすい
成分設計が安定
量は必ず少なめ
寒肥で「やらないほうがいい」肥料
- 液体肥料
- 高窒素肥料
- 即効性化成肥料
- 「今すぐ効く」を売りにしたもの
冬の根にとっては“刺激”になります。春になって根が動き出したらこれらは効果的です。
寒肥は「いつ」与える?

基本の適期
- 12月中旬〜1月中旬
- 植物が完全休眠〜準休眠に入った頃
NGな時期
- 11月(まだ地上部が動いている)
- 2月下旬以降(根・芽が動き始める)

「寒さが安定してから、動き出す前まで」
が寒肥の期間です。
寒肥は「どれくらい」与える?
共通ルールは通常施肥量の「3〜5割」
理由:
- 冬は吸収力が低い
- 多すぎると
→ 根の呼吸阻害
→ 土壌環境悪化
少なすぎることは失敗になりませんが、多すぎると失敗になります。
寒肥は「どう与える?」

地植えの場合
- 株元から少し離した位置に
- 表土を軽くほぐし、浅く混ぜる
- 根を切らない・掘り返さない
鉢植えの場合
- 植え替えはしない
- 表土2〜3cmを入れ替えるイメージ
- 置き肥なら小さく・数を減らす
植物別の寒肥の必要性
<初夏咲き宿根草(ジギタリスなど)>

寒肥は「保険」。主役は春の生育期施肥です。以下の場合のみ寒肥を与えましょう。
- 土が固く締まりやすい
- 雨が多く、冬に過湿になりやすい
- 肥沃度が低い(砂質・やせ土)
- 植え付けから1年未満
生理的特徴
- 冬は完全に地上部が枯れる
- 花は春以降の生育結果
- 春にまず葉と根を作るタイプ
寒肥の考え方
- 控えめでOK
- 土壌環境を整える目的に徹する
- 肥料分より「通気性・微生物」
量の目安
- 通常施肥の3割程度
- 肥料を入れすぎないことが最優先
<落葉低木・バラ>

生理的特徴
- 冬は休眠
- 春の芽吹きは貯蔵養分依存
寒肥の考え方
- 寒肥の効果が最も分かりやすい
- 有機質中心でしっかり仕込む
量の目安
- 通常施肥の4〜5割
- 株元を避け、広めに施す
<一番大切な判断基準>
迷ったら、これだけ覚えておけば大丈夫です。
- 「今、植物を動かしたいか?」
→ YESなら寒肥ではない
→ NOなら寒肥でいい - 寒肥は“何かを起こす施肥”ではなく、“起こせる状態を保つ施肥”。
