誰かのためを優先するほど、自分のやりたいことは後回しに。実はこの自己犠牲の癖こそが、先延ばしを悪化させる原因になることも。自分の心のパターンに気付ける「自己犠牲チェックリスト」と、専門家がすすめる改善のヒントを実例とともに紹介します。
教えてくれるのは、中島美鈴(なかしま・みすず)さん
臨床心理士・公認心理師・心理学博士。専門は時間管理とADHDの認知行動療法。現在は中島心理相談所 所長。九州大学大学院人間環境学府にて学術協力研究員も務める。著書に『先延ばしグセ、やめられました! 書いてみるとうまくいく』(大和書房)など多数。
なぜ“他人を優先する人”ほど先延ばしに陥りやすいのか【実例】
前回は、50代の先延ばしが一気に消える“実践4ステップ”を紹介しました。今回は、実例を通して「なぜ先延ばしが起きるのか」を見ていきます。
会社員ナナさん(40代女性)は小さい頃から絵を描くのが好きでした。しかし絵で食べていくのは難しいだろうと心配した両親の助言のもと、事務職として働いてきました。
20代は仕事を覚えるので必死で精いっぱいでした。30歳を越えると親が「まだ結婚しないの」と言い出しました。ナナさんだってそんな相手がいれば結婚してみたかったのですが、ご縁に恵まれませんでした。
会社では、子育て中の社員の分まで、残業もいとわずがんばって働いてきました。会社のためにがんばっていれば報われる、誰かが見てくれているはずと思ってここまできました。
しかし、ナナさんが45歳になったとき、親が大病を患い、急に亡くなったのです。これを目の当たりにしたナナさんは、愕然としました。
「結局、私って会社で出世することもなかったなあ。気付けば入社当時にいた社員もみんな辞めていて、まるでもう別の会社で働いているみたい」

