自己犠牲のパターンから抜けるためにできること
ナナさんには、最も当てはまる「自分がどんな気持ちかよりも、相手の機嫌のほうに目がいく」について検討してもらいました。
相手の機嫌をよくするためにナナさんはこれまでどんなことをしてきたでしょう。
親の助言を聞いて心配させないように、「人並みに働こう」と自分のしたいわけではない仕事を選んで就職しましたね。その後も会社のために、そして子育て世代の社員のために多くの仕事を引き受けて、文句一つ言わずに働いてきました。「誰かが見ていてくれるはず」と密かに評価を期待したものの、実際は何も報われていません。
この「誰か」とは誰なのでしょう。その誰かがナナさんの人生に責任をとってくれるのでしょうか?
ナナさんは目に涙を溜めて言いました。
「これまでの私って誰のためにがんばってきたんでしょうね。誰も責任なんてとってくれないのに」
ナナさんは「いつかそのうち自分のしたいことができるようになる」ような気がしていました。「いつの日か、誰かが“ナナさんの好きにしていいよ”って許してくれる」ような気がしていました。
しかし、そんな日がこれまであったでしょうか? 45歳を過ぎても誰もそんなこと言ってくれなかったのです。自然にしていても何にも解決しなかったのです。
「でも、それでも私、自分がしたいことで生きていくなんて今さらできない」
ナナさんの好きなことは絵を描くこと。
それだけで食べていける人はごくひと握りの人たちであることをナナさんはよく知っています。しかしそれ以上にナナさんに猛烈なブレーキを引く誰かがいました。
「今さらこの年齢になって、絵を描きたいなんて夢みたいなこと口にできない」
心の中に、親や世間の価値観の代表選手のような指揮官が「夢みたいなことを言うな」と厳しい言葉で規制をかけ続けているのです。
ナナさんには、そんな指揮官に苦しめられて泣いている、心の中のナナさんに気付いてもらいました。そして今から必要なのは、この泣いているナナさんを守る、優しくかつ論理的な大人を育てていくことなのです。
自分を後回しにしないと、先延ばしは自然と減っていく
「もっと自分を大切にしていいんだ」と気付いたナナさん。仕事の自己犠牲的な安請け合いをやめて、自分の時間を確保することにしました。
また、NPO法人を営む友人のためにパンフレットに載せるイラストを手伝わせてもらうことにしました。ずっと好きだった絵を描くことで、社会に貢献できることがうれしくてたまりませんでした。
手応えを感じたナナさんは、密かにやりたいと思っていた夢を少しずつ叶えていくことにしました。
フランスに行ってみたい、もう長らくしていないけど恋愛もしてみたい、パンづくりも習ってみたい……。
心の中の指揮官は今でも「そんな身勝手なことばかりするな」「贅沢な」と叱りつけてきますが、もう一人の優しく賢い大人が「結局待っていても自分の番は来ないんだよ。やりたいことは今やるしかないんだよ」と言い負かしてくれるのです。
こうして少しずつですが、ナナさんは自分の人生を取り戻しつつあります。
■ナナさんのうまくいったポイント
自己犠牲している自分に気付いたら、自分を縛りつけていた価値観に抵抗するための“もう一人の優しく賢い大人”を育てよう。
次回の記事では、「好きなものがない受け身人生が激変!「本屋」と「スマホ」にあるヒント」を紹介していきます。
※本記事は、書籍『先延ばしグセ、やめられました! 書いてみるとうまくいく』より一部抜粋して構成しています。

