改悪と言われる10年ルールとは?5年ルールが廃止される意味
iDeCoの一時金や企業型DC(企業型確定拠出年金)の一時金、そして会社から受け取る退職金は、いずれも退職所得として扱われます。これらには税制上の優遇があり、その中心となるのが退職所得控除です。
退職所得控除の基本的な仕組み
退職所得控除は、長年の勤労に報いるため、通常の所得よりも税負担が軽くなる特別な優遇制度です。控除額は勤続年数(iDeCoの場合は加入期間)に応じて以下の式で計算されます。
・勤続年数20年以下:40万円×勤続年数 ※最低80万円
・勤続年数20年超:800万円+70万円×(勤続年数−20年)
課税退職所得金額は、(退職金額−退職所得控除額)×1/2という計算式で求められます。
この仕組みにより、退職金にかかる税金は大きく軽減されています。
現行の5年ルールと改正後の10年ルール
現行制度:5年ルール
現行制度(2025年12月31日まで適用)では、「5年ルール」が採用されています。
iDeCoの一時金を受け取ってから6年目以降に退職金を受け取る場合、それぞれに退職所得控除を個別に満額適用できます。
例:60歳でiDeCoの一時金、65歳で会社の退職金を受け取る場合
→ 両方に控除が適用され、どちらも非課税となる可能性が高い状況でした。
改正後:10年ルール
改正後(2026年1月1日以降に受け取る分から適用)では、「10年ルール」に変更されます。
退職金を受け取る年の前年までの9年以内にiDeCoまたは企業型DCの一時金を受け取っていた場合、退職所得控除の重複分が調整されます。
退職金受け取り時の退職所得控除額から、iDeCo受け取り時に適用した控除額が差し引かれ、結果として控除額が減少。課税対象が増えることで、最終的な手取り額が減少します。
控除を満額利用するには、受け取る間隔を10年以上空ける必要があります。
退職金を先に受け取る場合:20年ルール(変更なし)
会社の退職金を先に受け取り、その後にiDeCoの一時金を受け取る場合のルールは変更されません。従来通り、退職金受け取りの前年から19年以内にiDeCoの一時金を受け取る場合、iDeCoの一時金に対する退職所得控除が制限されます。