◆1000万円の借金が1億円に

山下:朝の仕込みから夜の閉店後の掃除まで、芸人の仕事がない日はずっと店にいました。ほぼ毎日。
おかげさまでお店が繁盛して、今田さんと宮迫さんに借りた資金も返せたのでホッとしましたね。
――その後、フランチャイズ化や商標の売却など、順調にビジネスが大きくなりました。
山下:はい。商標の売却益と店舗からの利益などを合わせて、1億円くらいになりました。最初は借金して始めたのに、本当にいろいろと恵まれていたなと思います。
◆“ほったらかし投資”で資産3億円達成
――うどんの利益1億円を“ほぼ全部”投資に回したとか。
山下:銀行に預けていても金利はほぼ0%なので、それなら投資しようと。最初はNISAでリスクが小さいインデックス投資から始めて、その後個別株も触りだしました。
ただ、僕が投資を始めた2022年が暴落の年で、買えば買うほどマイナスになっていって(笑)。
結局9000万円くらい突っ込んで、「これはもう無理や!」と怖くなってしばらくパソコンを開くことはありませんでした。
――はからずも“ほったらかし投資”になっていたんですね。
山下:まあ僕の場合は現実逃避でしたけどね(笑)。そんな調子で数か月投資のことは忘れてて、ふと年末に見たらトントンまで返ってきて、年明けにプラスに転じたんです。そのときは本当によかったなと胸を撫で下ろしました(笑)。
――その後は順調に増やせているんですか?
山下:2023年からは調子がいいです。いまの総資産額は利確していないので含み益ベースですが、一時3億円は突破しました。
◆うどん屋と並行してライター業を始めた理由

山下:引退したスポーツ選手がキャスターとして現役選手にインタビューしたりしてるじゃないですか。それと同じようなことを、芸人でやったら面白いだろうし、芸人の気持ちがわかるからこそ聞ける話もあるかなと思って始めました。
お笑い芸人やタレントのインタビューが多いですが、違うジャンルだとしても共演したことがある方に声をかけやすいのは強みですね。
――例えばどんな方にインタビューされたんですか?
山下:最近だと堺正章さんですね。堺さんってあんまりインタビューを受けないらしいんですが、「山下くんだから」と快諾してくださいました。
――関係性があるから盛り上がる話もあるでしょうし。
山下:インタビュー自体はいろんな人と話せてめちゃくちゃ楽しいんですよ。でも書くのが……、面倒くさくないですか?
――いや、それを言っちゃうとライターとして……(笑)。
山下:まあそうなんですけど、一応喋るのはプロとしてやってきたけど、書くのは素人ですから大変なんですよ(笑)。うどん屋で一日働いた仕事終わりにヒーヒー言いながら原稿を書いてることもよくありました。
◆成功の秘訣は“オモロくない生き方”?
――ここまで、山下さんのいろんな面を伺ってきましたが、投資以外の現在の収入の割合を聞いてもいいでしょうか?山下:「山下本気うどん」にはプロデューサーとして関わっていて、その給料が割合的に一番大きいです。全体を10とすると、うどん6割:ライター3割:タレント1割くらいかな。
――え!? タレント1割?
山下:「少なくない?」みたいな顔してるやん!でも、芸人じゃなければここまでいろいろと仕事はできなかったと思います。
うどん屋をテレビやメディアで取り上げてもらえるのも、「芸人の山下」がやっていたから。堺正章さんに取材できたのも、そうですよね。
YouTubeの投資番組に呼ばれることも増えたんですが、別に4年で3億円は投資界隈ではそんなに珍しくない。でも、「芸人の山下」というオプションがあるからオファーをくださっているんだと思います。
――たしかに、すべてが「芸人の山下」さんだったから繋がっているかもしれませんね。ちなみに、ご自身で何の才能が一番あると思っていますか?
山下:全部そこそこだと思います、どれも中途半端なんですよ。
うどん屋も丸亀製麺さんみたいに大きくないし、投資も100億円稼いだテスタさんほど稼げてない。ライターや芸人としても大成していない。失敗しないけど、大成功もせず、全部普通なんですよ。
オモロー山下なのに、全然オモロくない生き方してますよね(笑)。ただ、失敗しないためのディフェンスだけはうまい。大失敗しない性格なんです。
――今後やりたいことはありますか?

あとは投資のバラエティ番組もやってみたいですね。堅くなく、楽しく投資を語る番組。芸人と投資家の両方の顔が生きるかなと思ってます。
<取材・文/松嶋三郎、撮影/杉原洋平>
【松嶋三郎】
浅く広くがモットーのフリーライター。紙・web問わず、ジャンルも問わず、記事のためならインタビュー・潜入・執筆・写真撮影・撮影モデル役など、できることは何でもやるタイプ。X(旧Twitter):@matsushima36

