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一生に一度は見たい、韓国南部・光の祭り

一生に一度は見たい、韓国南部・光の祭り

咸安(ハマン)「落火ノリ(遊び)」

火が大きくなるにつれ、会場で流れる音楽と呼応するように炎が揺らめく

咸安で行われる「落火ノリ(遊び)」は、毎年釈迦(しゃか)の誕生日(旧暦4月8日)に行われ、古代農耕社会の儀礼に由来する祭りで、咸安郡民の安寧を祈る意味から始まった。2008年10月には慶尚南道の無形遺産に指定された。使われる火薬は樫(かし)の炭などサステナブルな素材で作られている。咸安落火ノリ保存会(1992年設立・30名)が伝統的なこのお祭りの手法を守り続けている。招待歌手の公演やブースでの食事やドリンク提供などさまざまに楽しむことができる。

炎が水面に映る光景は一度見ると忘れられない。火がチリチリと燃える音、立ち上る煙、音楽――視覚と聴覚が一体となり、見る者の原始的な感覚を呼び覚ますかのよう。

2024年以降、ドラマ『生まれ変わってもよろしく』の撮影に使われたことなどから話題になり、訪問者数は年々増え、地元の祭りから全国的に知られる祭りに。そして日本の観光客にも注目される祭りとなった。今ではわずか数分でチケットが完売するほどの人気だという。最近では、旅行会社とともに行う日本人観光客限定イベントが10月~11月頃に行われていて、日本から初めて訪れる場合はおすすめ(2026年の実施は未定)。

地域の人々が古くからの形を守り、祈りを込めて執り行う点が、咸安の落火ノリの魅力。そこにあるのは“見るイベント”ではなく、土地と人がともに生きてきた証し。

一つ一つたいまつで火を灯していく
風を受けて炎が燃え上がる様子は幻想的

晋州南江(チンジュナムガン)流灯ノリ(遊び)

©韓国観光公社フォトギャラリー
願いを込めた灯籠が流れていく様子は幻想的
©韓国観光公社フォトギャラリー
歴史のシーンを表す灯も見られる
©韓国観光公社フォトギャラリー

文禄・慶長の役(1592-1598年に豊臣秀吉が明の征服を目的として朝鮮に侵攻した戦争)で犠牲となった人々を慰霊するために始まったとされる晋州の流灯ノリ(遊び)は、400年の歴史を経て、現在も晋州城のほとりで行われている。夕暮れ時に南江に様々な形の灯りが灯されることで始まる。願いの灯、伝統工芸灯、創作灯など数多くの灯りが煌(きら)びやかな光で華やかに夜を彩る。川岸など会場のあちこちではワークショップや灯りのアーケードなどがあり、通る人々を楽しませてくれる。アーティストによる演奏やおいしい食べ物が味わえるフードトラックもあるので、カップルや家族で楽しめる。

最近は、伝統的な灯籠の造形美を生かした巨大インスタレーションなども見もの。歴史を語る光のアートが城郭と水面に映り込む様子は、観光祭りとして洗練されながらも、長い歴史の中で息づいてきた“祈り”のメッセージと融合している。川風に揺れる灯りを眺めているだけで、心を浄化してくれる時間が訪れる。

流れゆく灯りや燃え落ちる炎は、自分の人生の歩みや、心に抱えてきたものを静かに振り返る時間をもたらしてくれる――そんな力を秘めた韓国南部の“光の祭り”。次の旅先を探しているなら、ぜひ一度その目で確かめてみてほしい。

text: Eriko Ryushi

・韓国「咸安落火ノリ」息をのむ幻想的な火祭りで、忘れられない夜を

配信元: marie claire

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