家族が心地よく暮らすには「ルール」を曖昧にしないこと
二世帯同居は、うまくいけば心強い支えになります。しかし、和子さん夫婦と娘夫婦はルールを曖昧にしたまま一緒に暮らし始めたため、負担を感じるようになったといえます。
特に金銭的なルールは、曖昧にしておくと危険です。光熱費や食費などを数字で明確化し、きちんと分ける必要があります。また、孫の面倒も範囲を線引きし、「週何回」「何時から何時まで」など具体的なルールを決めておけば、身体的・精神的な負担は大きく違っていたでしょう。
話し合いの末、和子さん夫婦は、孫の世話の頻度を減らしてもらうことにしました。それでも家計が急に楽になるわけではなく、将来への不安が消えたわけでもありません。ただ、夫婦だけで散歩をしたり、それぞれの時間を持つようにしたりしたことで、少しずつ気持ちを立て直す余地が生まれました。
「お金のことも、ちゃんとしないと。食費については、いっそ冷蔵庫そのものを分けるという話も出ています。そこまでするべきか……悩みますが、仲良く暮らしていきたいからこそ線引きが必要なのかもしれません」
そう和子さんは静かに語ります。
孫や子どもと暮らす幸せは、確かに大きなもの。しかし、その幸せは、親世帯が自由を犠牲にしてまで成り立つものではないのです。程よい距離感、明確な役割分担、そして感謝の言葉。それこそが、家族全員が長く心地よく暮らすための鍵だといえるでしょう。
新井智美
トータルマネーコンサルタント
CFP®
