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東大野球部の現役選手が司法試験に合格、ゴールドマン内定の慶應野球部生…日本特有の「文武両道いじめ」が球界から消えつつある理由

東大野球部の現役選手が司法試験に合格、ゴールドマン内定の慶應野球部生…日本特有の「文武両道いじめ」が球界から消えつつある理由

◆“一発逆転”ロマンの中に抑圧があった

 日本野球界では「野球道」という言葉がある。野球とは単なる遊びや気晴らしではなく、「生き方そのものである」という考え方だ。これは日本の伝統文化である武道の、いわば「道の思想」の影響を受けていると考えられる。

 「◯◯道」というと「一つのことを突き詰めることで真理に至る」というイメージを持っている人も少なくないはずだ。しかし「道」という言葉に含まれるニュアンスは「やり方」「技術」「ライフスタイル」などのもっと融通無碍なものである。そこには「野球以外、脇目も振らずに一つのことに集中すべき」という固定的なニュアンスはもともとない。実際、明治大正期の野球選手は野球だけでなくテニスや柔道もやり、起業をしたり、評論や詩を書いていた人もたくさんいたのだ。

 一直線に目的地を目指すのではなく、ときには寄り道をしながら自分なりの目標を見つけていく――スポーツだけでなく、語学や法律、異文化理解など別の方向性に目を向けるのも、本来の「道の思想」である。

 現在の野球界の「文武両道」の潮流を、「昔のような、恵まれない者の“一発逆転”のロマンがなくなった」と捉える人もいるだろう。しかしその「ロマン」のなかに「野球以外に目を向けるな」という抑圧が少なからずあったことに、反省的に目を向けておくべきではないかと思う。

【中野慧】
編集者・ライター。1986年、神奈川県生まれ。一橋大学社会学部社会学科卒、同大学院社会学研究科修士課程中退。批評誌「PLANETS」編集部、株式会社LIG広報を経て独立。2025年3月に初の著書となる『文化系のための野球入門 「野球部はクソ」を解剖する』(光文社新書)を刊行。現在は「Tarzan」などで身体・文化に関する取材を行いつつ、企業PRにも携わる。クラブチームExodus Baseball Club代表。
配信元: 日刊SPA!

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