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人気の「パネトーネ」や「バリスタ」コンテストも! 世界の食の祭典「ホスト・ミラノ」をレポート

人気の「パネトーネ」や「バリスタ」コンテストも! 世界の食の祭典「ホスト・ミラノ」をレポート

ホストミラノ
左から〉いずれも主催のフィエラ・ミラノのアンドレア・ソッツィ氏、フランチェスカ・カヴァロ氏、ロベルト・フォレスティ氏

44回目を迎えるこのイベント。主催は、国際展示場のフィエラ・ミラノで、イタリアが誇る食文化を通して、イタリアの食の豊かさをプロモーションしようというもの。出展者はシェフや卸店などとのつながりができ、販路の拡大などが期待できる。

そして、より多くの人を呼び込むために行われているのが、さまざまなコンテストだ。

特に今回の目玉となったのが、ミラノ発祥と言われるイタリアの伝統菓子の技術を国対抗で競う「パネトーネ ワールド チャンピオンシップ」と、コーヒーをいれるプロ、バリスタの国際大会「ワールド バリスタ チャンピオンシップ」。どちらにも、日本からの参加もあり、会場は大いに盛り上がった。

日本も参加、注目のクリスマス菓子「パネトーネ」世界一の決定戦

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近年、日本でもクリスマスのお菓子として注目を集めるパネトーネ。今回で4回目を迎えた「パネトーネ ワールド チャンピオンシップ」は毎回、このホスト・ミラノで開催。2019、21年は個人対抗だったが、23年からは国対抗の形式となり、日本は初回から参加、前回23年にはベーカリー「ドンク」が世界総合2位となった。内容は、クラシックなレーズンとオレンジピールの伝統的なパネトーネ、チョコレートのパネトーネ、アイスクリームを添えて提供するイノベーティブパネトーネの3つの部門で競われ、最終的に総合優勝者が決定する。

今回参加したのは9か国で、数は毎年増えている。スイーツ関連の企業が出展するエリアの設けられた特設ステージでは、主催で審査委員長のクラウディオ・ガッティさんの他、イタリアのパネトーネの巨匠イジニオ・マッサーリさんに学んだのちアメリカに渡り、オンラインショップで大成功をおさめたロイ・シュヴァルツァペルさんがダブル審査委員長として参加。

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シュヴァルツァペルさんは元プロバスケットボール選手からパネトーネの道に転じた異色のキャリアの持ち主で、「自分は難しいことに挑戦したくなる性格。バスケットボールからお菓子作りの道に転向した際に、パネトーネの技術が一番難しいと聞き、この道の最高峰を目指したいと思った」とその難しさを強調する。さらに参加各国を代表する審査員に加え、お菓子のオリンピックとも呼ばれる「クープ・デュ・モンド・ドゥ・ラ・パティスリー」のチャンピオンでもあるパリの「ホテル・プラザ・アテネ」のシェフ、アンジェロ・ムサさんら、ヨーロッパの著名パティシエがゲストとして招かれた。

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地元・ミラノの老舗イタリアン「アイモ・エ・ナディア」のシェフ、アレッサンドロ・ネグリーニさんにメディア審査員も加わり、総勢20人ほどが参加。さらにトークセッションではミシュラン二つ星店「DO」のシェフで、最近オープンしたベーカリー「D’OR」でオリジナルのパネトーネを販売しているダビデ・オルダーニさんらもステージに参加。華やかな会となった。

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審査は、見た目のみならず、香りや味わい、食感などの点から行われ、トラディショナルとチョコレートのパネトーネは、どこの国のものかは伏せて行われた。反面、各国が創意工夫を凝らし、その国らしさを競うのが、イノベーティブパネトーネ。今回、日本は団長の「エノテーカ ピンキオーリ名古屋」の島光平さん、富山の「ブーランジュリー グラン・オム」の小嶋慎一郎さん、「ブルガリ東京銀座バー&ドルチ」の黒川裕子さんの3人で参加。甘みがある奈良産の高級抹茶を練り込んだパネトーネに、ゆずと抹茶の香りのジェラートを添え、日本らしさを表現した内容に。

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シュヴァルツァペルさんは「お茶を使ったスイーツには、苦みしか感じないものが多いが、甘みを感じる。ゆずのシトラス感のバランスも良い」と絶賛したものの、残念ながらランクインを逃した。

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総合優勝を果たしたのは台湾、2位はアルゼンチン、3位はオーストラリアとなった。中でも見た目で会場を沸かせたのは、アルゼンチンのもの。ジェラートの上に繊細な模様のチュイルを載せ、まるで高級レストランのデザートを思わせるような盛り付けで、素朴な郷土菓子というイメージを覆し、パネトーネの新たな可能性を感じさせるものだった。

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こういったステージの他にも、各ブースでは、アメリカの有名シェフ、アントニオ・バクールさんがヴィエノワズリーとデザートを組み合わせた新感覚のスイーツについて記した自らの著書を発表するなど、最新のスイーツに関するトレンドを発信する場にもなった。

コーヒーをいれるだけではないバリスタの可能性

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一方、「ワールド バリスタ チャンピオンシップ(WBC)」は、年に1度、世界50か国以上の国内予選を勝ち抜いたその国の代表選手たちが集い、予選・準決勝・決勝の3ラウンドを経て世界一のバリスタを決定する。開催地は毎年変わるが、今回初めてホスト・ミラノで行われた。

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こちらも国対抗の形で、今年で25回目を迎える記念すべき年。今年の挑戦者は「猿田彦コーヒー」に所属する伊藤大貴さん。内容としては、自分でコーヒー豆をセレクトし、15分の制限時間内に、ドリップコーヒー、エスプレッソ、ミルクを使ったコーヒーの3杯をステージで実演して、客を想定した審査員に提供する。使用言語は英語で、味だけでなく、なぜこのドリンクを考案したかなどについて、トークやもてなし力を競う。

前半の司会には2014年のアジア人初の世界一となり、現在、希少な極上豆を使い東京でコーヒーのコースを提供する「珈空暈(コクーン)」井崎英典さんが登場、流暢(りゅうちょう)な英語でステージを取り仕切った。

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©Jack Simpson

世界一に輝いたのは、オーストラリア代表のジャック・シンプソンさん。井崎さんは「決勝では味わい、プレゼンテーション、技術のいずれも圧倒的な完成度を誇り、スコアもほぼ満点に近い数字をたたき出した。まさに“世界王者にふさわしい圧巻のパフォーマンス”だった」と振り返る。準優勝は、中国代表のサイモン・サンレイさん。井崎さんは「初の決勝進出ながら、『サステナビリティ(持続可能性)』をテーマにしたプレゼンテーションで高く評価された。中国のコーヒー文化の成熟と勢いを象徴する結果とも言える」と分析する。

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日本代表の伊藤さんは5位に入賞、「初出場でのこの結果は快挙。決勝のプレゼンテーションでは、圧倒的な存在感とカリスマ性を発揮し、観客を完全に引き込むパフォーマンスを見せた。一方で、採点傾向とトレンドの中心からやや外れたアプローチを取ったことが順位に影響したと考えられる」という。

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© Host Milano

現在の競技トレンドについて「エスプレッソ部門では甘さと質感に富み、フローラルで明確なフレーバーを持つゲイシャ種の嫌気性発酵コーヒー、ミルク部門では植物性代替乳と濃縮ミルクを組み合わせ、トロピカルフルーツの風味を引き立てる構成が主流となっている。

対して伊藤バリスタは、全てのカテゴリーでウォッシュトのゲイシャ種を使用。クリアな味わいを重視する方向性が評価されつつも、上位陣が示した“甘さとフレーバーのインパクト”に比べるとやや印象が控えめとなった。とはいえ、彼のリスクを恐れない姿勢と強烈なカリスマ性は、世界中の観客と審査員に強い印象を残したに違いない」と語っている。

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ちなみに、この「ワールド バリスタ チャンピオンシップ」は2026年の開催地は上質な豆の生産地として知られるパナマで、27年4月には、東京で開催予定だ。井崎さんはこの誘致にも関わり、「実は2007年にも東京で開催されており、高校を中退してフリーターをしていた時に、父に連れて行かれたのがきっかけで、この世界に魅せられ、一言も話せなかった英語を学び、ついにはチャンピオンになることができた。若い人にもこの仕事の魅力を伝え、さらには世界におけるバリスタの地位を上げたい」と語っている。

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パナマのコーヒー卸会社「カルデラコーヒー」
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中国のコーヒー卸会社「YDセレクト」のブース

ステージはコーヒーの卸店などのブースが並ぶエリアにあり、パナマやコロンビアなどのすでに著名な産地のほか、中国・雲南省産のプレミアムコーヒーのブースもあり、今回の中国世界2位という結果も合わせ、注目を集めていた。

今年12月15〜17日には同イベントは、サウジアラビアにも拡大「ホスト・アラビア」として開催予定、イタリアが誇るコーヒーやスイーツなどを中心とした食のトレンドの発信を中東からも行うことになった。本場ミラノでは、次回は2027年10月の開催となる。

photo & text: Kyoko Nakayama

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配信元: marie claire

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